この調理器を売り出したのは、鍋の会社ではありません。 台所の外側からやってきた集団が電子レンジの中に「もう一つのコンロ」を作りました。
はじめに
夜9時。 帰宅して、鞄を置いて、冷蔵庫を開ける。 そこまでは動けます。
問題はその先です。 フライパンを出し、火をつけ、油がはねないよう見張り、焼き加減を確かめ、最後に油まみれの鉄板を洗う。 この一連の「つきっきり」が、疲れた体には重くのしかかります。 結局レトルトで済ませて、少しだけ後ろめたい気持ちで眠る。 そんな夜を、多くの人が繰り返しています。
物価が上がり、外食も総菜も気軽ではなくなりました。 一方で「タイパ(時間対効果)」という言葉がすっかり定着し、家事にかける時間そのものを削る道具に注目が集まっています。
そこに現れたのが、FastChef(ファストシェフ)というキッチンブランドと、その第一弾となる電子レンジ調理器 RangeRange(レンジレンジ)です。 食材を入れて、フタをして、電子レンジに入れる。 あとは放っておくだけで、焼き魚にも、ハンバーグにも、炊飯にもなるという製品です。
ただ、この記事で本当に掘り下げたいのは調理性能だけではありません。 FastChefというブランドを企画した「運営元の正体」が、想像とはまるで違うからです。 調理器具メーカーでも、家電メーカーでもない。 その一点を知ると、RangeRangeという商品の輪郭が、驚くほどはっきり見えてきます。


FastChefとは
企業詳細
まず結論から整理します。 FastChefは、株式会社新東通信が企画するキッチンブランドです。「Cook Fast, Eat Slow(手軽に作って、ゆっくり食べよう)」というコンセプトを掲げ、その第一弾として電子レンジ調理器レンジレンジを2024年11月15日に発売しました。販売チャネルは公式サイト、Amazon、家電量販店などとされています。
問題は、この新東通信という会社が何者か、という点です。
運営元は、名古屋発の独立系総合広告会社
株式会社新東通信は、愛知県名古屋市中区と東京都中央区に本社を置く独立系の総合広告会社です。1972年(昭和47年)8月に谷喜久郎氏が設立しました。 つまり、鍋やフライパンを作り続けてきたメーカーではなく、広告・マーケティング・コミュニケーションを本業としてきた会社が、自社ブランドとして調理器具の世界に踏み込んだことになります。 冒頭の伏線は、ここで回収されます。 RangeRangeは「台所の外側」から生まれた製品なのです。
企業規模と体制
公開情報を突き合わせると、輪郭はかなりはっきりします。 資本金は9,000万円、売上高は330億円(2025年8月期)、従業員は305名(2025年8月期)とされています。本社所在地は愛知県名古屋市中区丸の内、代表者は谷鉃也氏で、未上場企業です。 広告業界において、電通や博報堂のような巨大資本の系列に属さない「独立系」で数百億円規模の売上を維持している点は、地方発の広告会社としては珍しい部類に入ります。
財務面についても、第三者の企業情報データベース上でいくつかの数値が確認できます。2022年の決算では売上が280億5,900万円、経常利益が10億1,300万円、自己資本比率は36.1%と記載されています。 未上場のため有価証券報告書のような詳細な開示はありませんが、外部から一定の健全性を推し量れるだけの情報は流通している、という状態です。
「何かおもろいことないか」という行動原理
この会社の性格がよく表れているのが、過去の実績です。1975年にはフリスビーを日本に導入する全国キャンペーンを展開し、1980年には名古屋オリンピック誘致を掲げて第一回名古屋シティマラソンを提案、企画・運営を担当しました。さらに愛・地球博では誘致活動の段階から関わり、2005年の本番でも各種パビリオンやイベント、閉幕式の企画運営を手がけています。社内では「何かおもろいことないか」という行動原理が共有されているとも紹介されています。
商品を作る会社ではなく、「まだ世の中にない習慣」を作ってきた会社。 フリスビーという遊びを日本に広め、市民マラソンという文化を根づかせた延長線上に、「電子レンジで本格調理をする」という新しい生活習慣の提案がある、と読み解くと筋が通ります。FastChefのブランドメッセージも、手軽に作れるからこそ食事や団らんの時間をゆっくり楽しめる、という生活価値の提案に軸足を置いています。
この出自が意味すること(良い面と、注意すべき面)
ここは公平に見ておきたい部分です。
良い面は、「伝える力」と「売り場を作る力」を本業として持っていることです。 実際、RangeRangeはブランド公式ショップだけでなく、大手家電量販店やテレビ通販といった複数のチャネルで扱われています。家電量販店ではレンジ用調理グッズとして取り扱われ、テレビ通販でも本体・シリコンミトン・レシピブックの構成で紹介されています。 無名の海外系ブランドが単発でネット販売するのとは、露出の質が明確に違います。
一方で注意すべき面もあります。 それは、調理器具メーカーとしての歴史がまだ浅いということです。 コーティング技術や金属加工のノウハウを何十年も蓄積してきた老舗メーカーと同じ土俵で語るには、時間が足りません。 また、販売ページの表記では、本体はアルミメッキ鋼板に内部PTFEコーティング、外側は耐熱塗装という構成で、製造は海外で行われている旨が記載されています。 企画・ブランド運営は日本の企業、生産は海外の工場、という近頃よく見かける座組みです。 これ自体は珍しくもなければ問題でもありませんが、「日本の会社のブランドだから隅々まで国産」と思い込むと、認識がずれます。
そして、サポート窓口や保証範囲について、当ブログのリサーチでは詳細を確定できませんでした。 不明な点を「安心です」と言い切ることはしません。 購入前に販売店ごとの保証条件を確認する、という一手間は残ると考えるのが誠実な見方です。
★当ブログのオリジナル企業信頼度評価(5つ星評価)
リサーチで確認できた企業情報をもとに、当ブログ独自の視点で信頼度を多角的に採点します。
運営体制の明確さ ★★★★☆(4.7)
運営元が株式会社新東通信であることが、プレスリリース、公式ショップ、量販店の商品情報から一貫して確認できます。 所在地、代表者名、設立年、資本金まで公開情報でたどれる点は、正体不明のブランドが乱立するこの分野では明確な強みです。
市場での評価実績 ★★★★☆(4.2)
公式ショップに加え、Amazon、大手家電量販店、テレビ通販と複数の販路に展開しており、閉じた環境だけで売られている製品ではありません。 ただし発売は2024年11月であり、長期使用者の声が積み上がるにはもう少し時間が必要です。
商品開発の専門性 ★★★☆☆(3.4)
本業は広告・コミュニケーション領域であり、調理器具の製造技術を長年蓄えてきた企業ではありません。 一方で、特許技術を用いた加熱設計や2層のダイヤモンドコーティングといった仕様を打ち出しており、企画力と外部の生産技術を組み合わせる手法自体は成立しています。
社会的・文化的な取り組み ★★★★☆(4.5)
市民マラソンの立ち上げや国際博覧会の企画運営など、地域と社会に関わる仕事を半世紀にわたって積み重ねてきた実績があります。 「忙しい人の食卓を軽くする」というブランドコンセプトも、その延長として自然に読めます。
財務情報の開示度 ★★★☆☆(3.5)
未上場企業のため詳細な財務諸表の開示はなく、投資家向けの情報公開もありません。 それでも第三者データベース上で売上規模や自己資本比率が確認でき、実体のある企業であることは十分に裏づけられます。
総合評価 ★★★★☆(4.1)
「聞いたことのないブランド名」という第一印象に反して、運営元の素性はきわめて明快です。 調理器具の専業メーカーではないという一点だけは頭に置きつつ、企業としての信頼度は安心して良い水準にあると判断します。
商品紹介「電子レンジ調理器 RangeRange」



商品詳細
色:レッド
特徴:焼く・蒸す・炒める機能、焦げ付きにくいダイヤモンドコート、食洗機対応
材質:アルミメッキ鋼板+PTFEコーティング+耐熱塗装、シリコン
調理バリエーション:1台で10通りの本格料理
加熱技術:特許技術による「プランプクッキング製法」
温度設計:260℃以上に上がらない特許技術
加熱方式:本体の特殊発熱体がマイクロ波に反応して加熱
加熱ムラ対策:プレート全体をムラなく均一に加熱
コーティング:ダイヤモンドコーティングのダブルコーティング加工
安全性:火を使わないレンジ調理
収納性:スクエア型で重ね収納が可能
付属レシピ:美容食インストラクター考案の美容健康レシピを収録
【1台10役でメインディッシュも、ちょっと一品もおまかせ!】
パリッと焼き魚、ふっくらジューシーなハンバーグや鳥肉のグリルもほったらかしで時短!
あらゆる料理が電子レンジを使って作れます。使い方は人それぞれ、一人暮らしの狭いキッチンでも、一口コンロでも同時に焼き料理が可能になります。付属のレシピには、TVにも出演している美容食インストラクター考案のお手軽美容健康レシピも収録!レンジレンジ1台あれば料理の幅が広がります。
【260℃以上に上がらない特許技術で食材の旨味をじっくり調理する「プランプクッキング製法」】
本体の特殊発熱体がマイクロ波に反応して加熱。特許技術により長時間加熱してもプレートが260℃よりも温度が上がりすぎない設計をしています。プレート全体をムラなく均一に加熱することで、熱と食材の旨味を循環させながらじっくり調理する「プランプクッキング製法」を採用しました。まるでフライパンで焼いたかのような焦げ目と、ふっくらジューシーな本格的な美味しさ!毎日の料理も、手の込んだご馳走もレンジレンジにおまかせ。260℃以上温度が上がりすぎないから、連続使用しやすいのも嬉しいポイント!
良い口コミ
「コンロの前に立たなくていいだけで、夕食作りのハードルが劇的に下がりました」
「魚を焼いても部屋に匂いが残らず、グリルを洗う地獄から解放されました」
「そのまま食洗機に放り込めるので、後片付けの心理的な負担がほぼゼロです」
「一口コンロの狭いキッチンで、実質もう一口増えた感覚があります」
「子どもがそばにいても火を使わないので、目を離せる時間が増えました」
気になる口コミ
「電子レンジ専用なので、直火やIHで使えないのは最初戸惑いました」
「レンジのワット数や機種によって、仕上がり時間の調整が必要でした」
「本体に厚みがあるぶん、小さいレンジだと庫内でギリギリでした」
「揚げ物のように油を多く使う料理には使えず、万能ではないと感じました」
「価格は調理器具としては安くないので、使いこなせるか最初は不安でした」
「電子レンジ調理器 RangeRange」のポジティブな特色
最大の価値は、調理時間の短縮そのものではありません。 「見張らなくていい」という一点にあります。
通常のフライパン調理では、火加減の調整、焦げの確認、ひっくり返すタイミングと、常に人がキッチンに縛られます。 RangeRangeは食材を入れてフタをし、電子レンジに入れたらそこで手が離れます。 その数分間で洗濯物をたたむ、子どもの宿題を見る、翌日の準備をする。 奪われていた時間が、そのまま手元に戻ってきます。
味の面を支えるのが「プランプクッキング製法」です。 本体の特殊発熱体がマイクロ波に反応して発熱し、食材を包み込むように加熱する仕組みで、特許技術により260℃を超えないよう設計されています。 温度が上がりすぎないという設計は、一見すると地味です。 しかし焦げすぎず、水分と旨味を逃しにくいという実利に直結します。 外側は香ばしく、内側はふっくら。 フライパンで焼いたような焦げ目が電子レンジで得られるのは、この温度管理があってこそです。 連続して使いやすい点も、家族分を続けて調理する家庭には効きます。
手入れのしやすさも見逃せません。 ダイヤモンドコーティングをダブルで施した構造により焦げ付きにくく、油汚れも落としやすく仕上げられています。 そして食洗機対応。 シンクに調理器具が残っているだけで、人は動く気力を失います。 「洗い物が視界にない」という状態を作れることは、続けられるかどうかを決定的に左右します。
火を使わない安心感、そしてスクエア型で重ねて収納できる省スペース性。 一人暮らしの手狭なキッチンでも、収納棚を圧迫しません。 付属レシピにはテレビ出演歴のある美容食インストラクター考案の健康レシピも収録され、購入直後に「何を作ればいいか分からない」という空白期間が生まれにくい設計になっています。
「電子レンジ調理器 RangeRange」のネガティブな特色
万能ではありません。 そこは正直に書きます。
まず、電子レンジ専用の調理器具です。 直火、IH、オーブン機能での使用は想定されていません。 「フライパンの完全な代替」を期待して買うと、確実に落差を感じます。 あくまで「もう一つの調理手段が増える」道具として捉えるのが適切です。
次に、揚げ物のように油を大量に使う調理には向きません。 温度が上がりすぎない設計とはいえ、油を溜めた加熱は想定外の使い方です。 安全に関わる部分なので、ここは割り切りが必要です。
電子レンジの機種差も現実的な課題です。 出力ワット数や庫内の広さは家庭によってまちまちで、レシピどおりの加熱時間が最初から最適とは限りません。 最初の数回は、様子を見ながら調整する期間が発生すると考えておいたほうが落胆しません。
そしてコーティング製品全般に言えることですが、金属のヘラで強くこすったり、硬いたわしで磨いたりすれば、耐久性は当然落ちます。 「焦げ付きにくい」は「絶対に劣化しない」という意味ではありません。 長く使うには、それなりの扱い方が求められます。
価格帯も、100円ショップのレンジ調理容器と比べれば当然高くなります。 「安いから試してみる」という買い方をする商品ではなく、調理習慣そのものを変えるための投資として考える製品です。


他メーカーの商品との比較
シリコンスチーマーとの違い
電子レンジ調理器の定番であるシリコンスチーマーは、蒸す・温めるという用途では非常に優秀です。 軽く、安価で、収納も柔軟。 ただし、焼き目や焦げ目は原理的に付きません。 RangeRangeは特殊発熱体がマイクロ波に反応して発熱する構造のため、焼き調理という領域まで踏み込んでいます。 「蒸し野菜が作れれば十分」ならシリコンスチーマーで足ります。 「焼き魚やハンバーグの焦げ目が欲しい」なら、選択肢は分かれます。
レンジ用魚焼きプレートとの違い
魚焼きに特化したレンジ調理皿も市場に多く存在します。 専用品だけあって魚は上手に焼けますし、価格も抑えめです。 一方で用途が狭く、収納棚の中で出番待ちの時間が長くなりがちです。 RangeRangeは焼く・蒸す・炒めるを1台でこなす設計で、稼働率という観点では優位に立ちます。 台所の収納が限られている家庭ほど、この差は効いてきます。
電気調理鍋(自動調理鍋)との違い
自動調理鍋は、材料を入れてボタンを押せば煮込み料理まで自動で仕上げてくれる強力な選択肢です。 ただし本体が大きく、置き場所と電源を専有します。 価格帯も一段上がります。 RangeRangeは調理器具であり家電ではないため、電源も設置スペースも不要。 使い終われば棚に重ねて収納できます。 「ほったらかし調理」という目的は共通していても、キッチンへの侵食度がまるで違います。
フライパンとの違い
言うまでもなく、フライパンは自由度で圧倒します。 火力を細かく操れ、大量調理もこなします。 その代償が「つきっきり」と「油汚れの洗い物」です。 RangeRangeはこの2つのコストを削るための道具であり、フライパンを追い出す道具ではありません。 併用してこそ価値が出ます。
結論としての選び方
蒸し料理中心ならシリコンスチーマー、煮込みまで完全自動化したいなら自動調理鍋、そして「火を使わず、見張らず、焼き目のある料理を、洗い物を増やさずに作りたい」ならRangeRangeが最も噛み合います。 判断軸は価格ではなく、あなたが日々の料理のどこに一番ストレスを感じているか。 そこに尽きます。
まとめ
FastChefの正体は、鍋を作り続けてきたメーカーではなく、半世紀にわたって新しい生活習慣を世に広めてきた広告会社でした。 だからこの製品は、性能表よりも先に「あなたの夜の時間をどう取り戻すか」を語ります。
電子レンジ調理器 RangeRangeは魔法の道具ではありません。 揚げ物は作れませんし、レンジの機種によって調整も要ります。 それでも、コンロの前に立ち尽くす15分と、油まみれのフライパンを洗う5分が消える意味は、実際に疲れた夜を過ごした人ほど深く理解できるはずです。
物価も忙しさも、当分は緩みそうにありません。 だからこそ、家事の総量そのものを減らす道具に価値が生まれています。
今日できる小さな一歩は、ひとつだけ。 今夜の夕食で、フライパンを使わずに済ませられるおかずが何品あったか、数えてみてください。 その数がゼロなら、RangeRangeがあなたの台所を変える余地は、まだたっぷり残されています。




