ゆで玉子の出来を決めるのは料理の腕ではありません。鍋の前に立たなくていい「あの数分」です。
はじめに
朝の台所で、鍋のお湯がぐらぐら沸いている横でお弁当箱を広げ、水筒にお茶を注ぎ、洗濯機の終了音に呼ばれて席を外す。
戻ってきたら、ゆで時間はもう2分オーバー。
半熟のつもりが、黄身はぱさぱさの固ゆでになっていました。
しかも殻をむくと白身がぼろぼろにはがれ、指先には小さなイライラだけが残ります。
あの地味な敗北感、身に覚えのある方は少なくないはずです。
2023年には鳥インフルエンザの影響で卵の値段が大きく上がり、「エッグショック」という言葉まで生まれました。
あれ以来、卵を1個でも失敗で無駄にしたくないという気持ちが、少し強くなった気がします。
そこで今回取り上げるのが、ANABAS(アナバス)の「ANABASスチームクッカーゆで玉子名人SE-001」です。
水を入れてタイマーを回すだけで、ゆで玉子を一度に最大7個まで蒸し上げてくれる、黄色い小さな調理家電です。
この記事では、まずANABASを手がける会社の実像を掘り下げ、続いて商品の長所と弱点、他メーカー製品との比較まで、良い面も気になる面も遠慮なくお伝えします。
読み終える頃には、冒頭の一文の意味がきっと腑に落ちるはずです。


ANABASとは
企業詳細
ANABASを手がけるのは「太知ホールディングス」
ANABASは、株式会社太知ホールディングスが展開する生活家電・雑貨のブランドです。
料理メディアの商品紹介でも、「ゆで玉子名人」は太知ホールディングス(ANABAS)の製品として掲載されています。
家電量販店ヨドバシカメラの通販サイトでも、アナバス製品のメーカー欄は「太知」と表示されています。
つまり「ANABAS」はブランド名、「太知ホールディングス」は運営する会社名という関係です。
1973年創業、海外向け専門商社という意外な出自
ゆで卵メーカーのブランドと聞くと、台所用品一筋の会社を想像しがちです。
ところが太知ホールディングスのルーツは、まったく別のところにあります。
同社は中東・アフリカ諸国の政府向け取引を専門とする商社として1973年に設立され、その後は海外事業をアジアや中南米にも広げてきたと説明しています。
政府相手の取引は、契約条件も品質要求も厳しい世界です。
その経験を持つ会社が、家庭用の小さな家電を手がけているという点は、このブランドを理解するうえで押さえておきたいポイントです。
年功序列を廃したフラットな組織
同社は企業理念として「企業維新」という言葉を掲げています。
日本企業の多くが年功序列だった1970年代の段階で、年功序列と部署間の縦割りを廃止し、必要最小限の部門だけで構成するシンプルな組織をつくったとしています。
社員一人ひとりが自分のポジションに応じた決裁権と責任を持つ、自主管理型の運営を徹底しているとも述べています。
少人数で意思決定が速い会社であることが、この記述からうかがえます。
会社概要で確認できる情報
求人情報サイトに掲載された会社概要によると、所在地は東京都千代田区富士見、代表取締役は田中景介氏、資本金は9,900万円、従業員数は11〜50人の規模です。
事業内容としては空調事業、医療事業、車輌事業などが挙げられています。
ただし、これは掲載時点の情報であり、現在の代表者や事業構成が変わっている可能性はあります。
従業員数の規模から見ても、大手家電メーカーではなく、小回りのきく中小企業と考えるのが自然です。
ANABASブランドが扱う商品の幅
海外の企業データベースでは、ANABASは家族に喜ばれる個性的な家庭用品の開発・販売を手がけ、ポータブルレコードプレーヤーやキッチン家電、防犯機器などを展開していると紹介されています。
実際に量販店の取り扱い一覧を見ると、ゆで玉子名人SE-001のほか、ポータブルレコードプレーヤー、CDラジカセ、懐中電灯付きの防災ラジオ、2段タイプのゆで玉子名人SE-002などが並んでいます。
台所、音楽、防災と、ジャンルの振れ幅はかなり大きめです。
「家庭で使う、ちょっと気の利いた道具」というのが、ブランド全体に共通する方向性と言えます。
昭和の名機を正式ライセンスで復刻した実績
ANABASの名前を音楽好きの間で広めたのが、レコードプレーヤーの復刻です。
1980年に日本コロムビアが発売したポータブルレコードプレーヤー「GP-3」を、ANABASは2019年に「GP-N3R」として正式ライセンスのもと復刻し、さらにBluetooth(ブルートゥース:無線でつなぐ規格)に対応した後継モデルも登場させています。
GP-N3Rはオーディオテクニカ製のカートリッジ(針の部品)を採用し、AC電源と単1乾電池6本の両方で動くことが紹介されています。
1970〜80年代の機種を復刻したポータブルミキサー「GMX-N3」もラインナップにあります。
他社の名機を正式な許諾を得て蘇らせるには、権利元との交渉力と信用が欠かせません。
商社として培った交渉の経験が、こうした企画に生きていると見ることもできます。
「ゆで玉子名人」シリーズの位置づけ
ヨドバシの販売ページでは、ゆで玉子名人SE-001に2017年8月の日付が表示されており、2段タイプのSE-002には2023年4月の日付が付いています。
少なくとも8年以上、同じ型番で売られ続けているロングセラーということになります。
入れ替わりの激しい小型キッチン家電の世界で、これだけ長く店頭に残っている点は評価できます。
メディアでの評価
SE-001は、専門誌の検証で高い評価を受けています。
雑誌MONOQLO(モノクロ)が専門家と行ったゆで卵メーカーの実証テストで1位のベストバイに選ばれ、とくに半熟卵の仕上がりが比較した他社製品より際立っていたと評価されています。
さらに「MONOQLOベストバイ・オブ・ザ・イヤー2025」のAmazon掘り出し物編にも選出されています。
ITmediaのレビュー記事でも、使い勝手と安定性の両面で評価が高い電気式ゆで卵メーカーとして紹介されています。
ブランド名「ANABAS」の由来は?
英語の辞書で「anabas」を引くと、アフリカや東南アジアの池や沼にすむ小型の魚の属名で、ギリシャ語の「上がる」という言葉に由来すると説明されています。
ただし、ブランド名がこの言葉から取られたのかどうかについて、同社の公式な説明は今回のリサーチでは確認できませんでした。
ここは推測で断定せず、気になる方は公式サイトで確認することをおすすめします。
リサーチで分かったこと・分からなかったこと
分かったのは、運営会社が1973年創業の実在する企業であり、所在地や資本金といった基本情報が公開されていることです。
また、正式ライセンスによる復刻製品や、専門誌での受賞歴など、外部から確認できる実績も揃っています。
一方で、売上高や利益といった財務情報は、非上場企業ということもあり見つかりませんでした。
海外のデータベースには1996年にANABASが始まったとする記述もありますが、公式な裏付けは確認できていません。
ゆで玉子名人の製造を自社で行っているのか、外部の工場に委託しているのかも公開情報からは判断できませんでした。
★当ブログのオリジナル企業信頼度評価(5つ星評価)
運営体制の明確さ ★★★★(4.0)
1973年創業の運営会社が存在し、所在地や資本金、代表者などの基本情報が確認できます。
ブランドと会社の関係も量販店の表示で裏付けられており、正体不明の販売者ではありません。
市場での評価実績 ★★★★☆(4.5)
MONOQLOの実証テストで1位、2025年のベストバイにも選ばれるなど、第三者の評価がはっきりしています。
8年以上同じ型番で販売が続いている点も、市場に受け入れられている証拠と言えます。
商品開発の専門性 ★★★☆(3.5)
昭和の名機を正式ライセンスで復刻するなど、企画力には光るものがあります。
一方で、自社設計・自社製造かどうかが公開情報から読み取れないため、やや控えめな評価としました。
社会的・文化的な取り組み ★★★☆(3.5)
レコード文化の復刻や防災ラジオの展開など、暮らしや文化に寄り添う商品づくりが見られます。
ただ、CSRのような体系的な社会活動の発信は確認できませんでした。
財務情報の開示度 ★★☆(2.5)
資本金は公開されていますが、売上高や決算情報は見当たりません。
非上場の中小企業としては珍しいことではないものの、透明性の面では伸びしろがあります。
総合評価 ★★★☆(3.6)
派手な大手ではないものの、長い社歴と第三者評価に支えられた「堅実な中小ブランド」という印象です。
財務面の情報が少ない点を差し引いても、安心して商品を検討できる水準にあると判断しました。
商品紹介「ANABASスチームクッカーゆで玉子名人SE-001」



商品詳細
- 色:イエロー
- 材質:ポリプロピレン
- ブランド:Anabas
- 商品の寸法:20.5長さ×18幅×18.8高さcm
- 商品の重量:0.6キログラム
- 本体サイズ:幅20.5×奥行18×高さ18.8cm
- 電源:AC100V 50/60Hz
- 消費電力:370W
- 保証期間:お買い上げ日より1年
- 本体重量(kg):0.6
- 特長:ゆで玉子や蒸し料理を簡単に
- タイマー:半熟~固ゆでまでゆで加減を調整できる調理タイマー付き(最大30分)
- 調理個数:一度に最大7個までゆで卵が作れる
- 蒸し料理:ヘルシーでおいしい蒸し料理も簡単に作れる
- 肉まん:肉まんもホカホカにできる
- お手入れ:上部のトレー、フタは取り外しが可能。お手入れも簡単
良い口コミ
「水を入れてタイマーを回すだけなので、お弁当を詰めている間にゆで玉子ができ上がっていて助かっています」
「鍋でゆでていた頃より殻がつるんとむけるようになり、白身がぼろぼろになる朝のイライラが減りました」
「7個まとめて作れるので、日曜の夜に煮卵用を一気に仕込んでいます」
「黄色い見た目がかわいくて、出しっぱなしにしていても台所が明るく見えます」
「冷凍の肉まんを蒸したら、電子レンジで温めるよりふっくらして家族に好評でした」
気になる口コミ
「でき上がりを知らせる音が思ったより大きく、早朝だと家族を起こしてしまわないか少し気になります」
「水を入れる受け皿は本体と一体なので、トレーやフタに比べると洗いにくいと感じました」
「好みの固さになる時間を見つけるまで、何回か試す必要がありました」
「家族が多いと7個では足りない日もあり、2回に分けて作ることがあります」
「高さが20cm近くあるので、狭いキッチンだと置き場所に少し迷いました」
「ANABASスチームクッカーゆで玉子名人SE-001」のポジティブな特色
いちばんの強みは、「ゆでる」のではなく「蒸す」仕組みにあります。
鍋いっぱいのお湯を沸かす必要がないため、使う水は少なく、コンロも1口空きます。
朝の台所でコンロが1口空くというのは、思っている以上に大きな差です。
その空いたコンロで、卵焼きやお味噌汁を同時に進められるからです。
2つ目の強みは、最大30分の調理タイマーです。
タイマーの時間で、半熟から固ゆでまで仕上がりを調整できます。
実際に使ったモニターの方は、半熟はおよそ9分、固ゆではおよそ13分で仕上がったと報告しています。
ただしこれは一人の使用例で、卵の大きさや冷蔵庫から出した直後かどうかで変わります。
最初の数回は自分好みの時間をメモしておくと、3回目あたりからは迷わなくなるはずです。
3つ目は、一度に最大7個という容量です。
朝食に2個、お弁当に1個、残りは煮卵にしておく、という使い分けができます。
ラーメン屋さんのような味玉を週末に仕込んでおけば、平日の夕食に「もう1品」がすぐ出せます。
4つ目は、ゆで玉子専用機で終わらないことです。
蒸し野菜や肉まんにも使えるので、ブロッコリーやかぼちゃをさっと蒸して、お弁当の彩りに回すこともできます。
秋の夜長、コンビニで買った肉まんをふっくら温め直すのにも向いています。
5つ目は、トレーとフタが外せることです。
洗う部品が少なく、使い終わったら水を捨ててサッと洗えば片付けは終わります。
そして見落とされがちなのが、冒頭でお話しした「あの数分」です。
鍋でゆでるなら、吹きこぼれや時間が気になって、どうしてもコンロの前から離れられません。
SE-001ならタイマーを回した瞬間から、その場を離れて別の家事に取りかかれます。
ゆで玉子の仕上がりが安定するのは、腕が上がったからではありません。
「見張っている時間」そのものを、機械が引き受けてくれるからです。
これこそが、この商品の本当の価値だと感じます。
「ANABASスチームクッカーゆで玉子名人SE-001」のネガティブな特色
まず、提供されている商品情報には、空だきを防ぐ機能や自動で電源が切れる機能についての記載がありません。
そのため、この点は「ない」とも「ある」とも断定できません。
水を入れ忘れないよう、使う前に確認する習慣をつけておくと安心です。
次に、温泉卵ができるかどうかも商品情報には書かれていません。
対応範囲として明記されているのは半熟から固ゆでまでなので、温泉卵を主目的にする方は別の選択肢も検討したほうがよいでしょう。
また、容量は1段で最大7個です。
4人以上の家族で毎朝2個ずつ食べるような使い方だと、1回では足りない場面が出てきます。
本体はポリプロピレン製で、軽くて扱いやすい反面、金属製の調理器具のような重厚感はありません。
価格を考えれば妥当ですが、高級感を求める方には物足りなく感じられるかもしれません。
口コミの分析記事では、タイマーの音が大きめなことや、水を入れる受け皿が洗いにくいことが気になる点として挙げられています。
家族が寝ている早朝に使う方や、細部まで清潔に保ちたい方は、この2点を理解したうえで選ぶのが無難です。
最後に、保証はお買い上げ日から1年です。
小型家電としては一般的な長さですが、長期保証を重視する方は購入店の延長保証も確認しておくとよいでしょう。


他メーカーの商品との比較
比較の前提
ゆで卵メーカーには、電気で蒸す「電気式」と、電子レンジで加熱する「レンジ式」があります。
今回は同じ電気式から1機種、レンジ式から1機種を選び、SE-001と比べました。
価格は販売店や時期で変わるため、目安として参考にしてください。
GROWNSY「スチームクッカーゆで卵メーカー」との比較
GROWNSYのスチームクッカーは1段と2段を使い分けられる電気式で、2段合わせて最大14個を同時に調理できます。
水がなくなると自動で電源が切れる空焼き防止機能が付いている点も紹介されています。
容量と安全機能の明記という点では、SE-001より優れています。
一方、本体は186×186×267mmと、高さはSE-001より8cmほど高くなります。
販売価格の目安は3,500〜7,000円前後とされており、MONOQLOの記事で最安価格1,680円と紹介されたSE-001と比べると、価格面ではSE-001に分があります。
調理の目安は半熟10分、固ゆで16分とされています。
曙産業「レンジでらくチン!ゆでたまご3個用RE-278」との比較
RE-278は電子レンジで使う調理器具で、一度に作れるのは3個、本体は約153×129×137mm、重さは約166gです。
日本製で、本体はポリプロピレン、内側にはアルミニウムが使われています。
価格比較サイトでは最安値が1,000円台前半で掲載されており、軽さと価格ではSE-001に勝ります。
ただし電子レンジを使っている間は、他の料理を温められません。
調理個数も半分以下で、蒸し野菜や肉まんといった使い回しの幅でもSE-001が上回ります。
参考:同ブランドの2段モデル「SE-002」
同じANABASには2段タイプもあり、最大14個まで加熱でき、サイズはおよそ幅20.5×奥行18×高さ26.2cmです。
量販店ではSE-001より1,000円ほど高い価格で掲載されています。
設置面積はSE-001とほぼ同じなので、家族が多い方はこちらも候補になります。
どれを選ぶべきか
価格と半熟の仕上がりを重視するなら、専門誌で実績のあるSE-001が有力です。
家族が多く、空焼き防止機能をはっきり求めるならGROWNSYが向いています。
一人暮らしで1〜2個あれば十分なら、RE-278で足りる場面も多いはずです。
まとめ
卵1個を落とさないように、そっと鍋に入れる朝の慎重さ。
ANABASの「ANABASスチームクッカーゆで玉子名人SE-001」は、その緊張感ごと引き受けてくれる道具です。
1973年創業の商社が、昭和の名機の復刻と同じ丁寧さで送り出している、堅実なブランドでもあります。
空だき防止の記載がない点や7個という容量には注意が必要です。
それでも、鍋を見張らずにすむ数分は、慌ただしい朝にはかなり大きな贈り物になります。
まずは明日の朝、ゆで玉子にかかっている時間を一度だけ計ってみてください。
その数字が、この1台が必要かどうかを教えてくれます。




