この椅子がいちばん救うのは座る人ではありません
はじめに
床に座り込んだ親を、一人で抱え上げようとしたことはありますか。
体重50kgの人でも、力の抜けた体は驚くほど重く感じます。
お米の袋を両腕で持ち上げる時の、何倍もの重さです。
腰に嫌な痛みが走り、それでも手を離せない。
あの数分間の心細さは、経験した人にしか分かりません。
団塊の世代がすべて75歳以上になり、自宅で家族を支える場面はこれからも増えていきます。
畳やこたつ、床に布団を敷く暮らしに慣れた家庭ほど、「床から立つ」動作の負担は大きくなります。
そこで今回取り上げるのが、MAIDeSITe(メイドサイト)の「MAIDeSITe電動起立補助座椅子GQ20-168080-AJ」です。
床に座ったままの状態から、ボタン一つでゆっくり持ち上げてくれる電動の補助機器です。
ただ、調べていくと、ブランドの素性にも商品ページの表記にも、気になる点がいくつも見つかりました。
良い点も引っかかる点も、包み隠さずお伝えします。
冒頭の一文の意味も、読み進めるうちに見えてくるはずです。


MAIDeSITeとは
企業詳細
同じ名前の「二つの顔」
MAIDeSITeについて調べると、最初に出てくるのは介護用品ではなく、電動昇降デスクのブランドです。
プレスリリースによれば、Maidesiteは2020年に創業したスマートワークスペースブランドで、シンガポールに本社を置くMAIDESITEGLOBALPTE.LTD.の完全子会社の傘下にあります。
電動スタンディングデスクと人間工学に基づいたオフィス製品の研究開発・製造を専門とし、ヨーロッパと日本で25万人以上の顧客にサービスを提供しているとされています。
2026年9月には、2026年のHiiibrandInternationalBrand&CommunicationDesignAwards(国際ブランド&コミュニケーションデザイン賞)でMeritAward(優秀賞)を受賞しました。
デスク製品については、CE安全認証を取得し、5〜10年の保証を付けていると発表しています。
ここまでは、オフィス家具の会社としての顔です。
介護・福祉機器としての顔
一方で、海外のAmazonでは「MAIDeSITe」という大文字・小文字が混ざった表記で、床からの立ち上がりを助ける電動リフトが販売されています。
代表的なのが、「Charles(チャールズ)」というモデル名で売られている電動チェアリフトです。
型番はJC35M3、海外Amazonでの販売開始日は2021年10月14日、メーカー欄もMAIDeSITeとなっています。
リフトチェア部門で売れ筋ランキング1位を記録しており、カスタマーレビューは5段階中4.5、件数は2,451件という数字も残っています。
最大約136kg(300ポンド)まで対応し、10万回以上の昇降テストを実施、1年保証と米国拠点の24時間サポートを掲げています。
このほか、最大約200kg(440ポンド)まで持ち上げられる折りたたみ式のフロアリフトや、床からの持ち上げと浴槽での昇降を兼ねたIPX8(完全防水の等級)対応モデルも確認できました。
つまり介護分野のMAIDeSITeは、「転倒後に床から立ち上がる」場面に特化した製品群を、数年にわたって展開してきたことになります。
企業データベースに残る別の記録
もう一つ、見逃せない情報があります。
海外の企業情報サイトには、杭州を拠点に2013年に設立され、リハビリ機器の研究開発・販売を行うMaidesiteという記録が登録されています。
同サイトでは、2023年8月にシード(創業初期)段階の資金調達を行い、HengxuCapitalとXiangyumedicalという2つの出資者がいるとされています。
事業領域は在宅介護、高齢者の移動支援、高齢者向けの浴室用品と記載されており、介護リフトの製品群とは内容が一致します。
ただし、これは有料会員向けの集約サイトの情報で、公式発表ではありません。
デスクのMaidesite(2020年創業・シンガポール本社)と、介護機器のMaidesite(2013年設立)が同じ企業グループなのか、名前が似ているだけの別会社なのかは、今回の調査では確定できませんでした。
今回の商品ページに見つかった不整合
さらに気になったのが、今回の商品の説明文です。
商品名は「電動起立補助座椅子GQ20-168080-AJ」なのに、説明文の中では「電動移乗リフトAX35」と書かれています。
調べてみると、「AX35」はVOCIC(ヴォシック)という別ブランドの製品名として販売されています。
VOCICのAX35は、4輪付きのポータブル電動フロアリフトで、耐荷重は350ポンドです。
350ポンドを換算すると約159kgで、今回の説明文にある「耐荷重約160kg」とほぼ一致します。
一方、VOCICAX35の本体重量は32ポンド(約14.5kg)で、今回の「約16.3kg」とは差があります。
同じ製品の別仕様なのか、説明文が流用されたのか、単なる型番の書き間違いなのか。
この点は断定できないため、購入前に販売元へ問い合わせることをおすすめします。
分かったこと・分からなかったこと
分かったことは、MAIDeSITeの名前で床からの立ち上がり補助リフトが海外で数年販売され、一定の評価を得ていることです。
分からなかったのは、日本向けの販売元の正式な会社名、日本語でのサポート窓口、そして今回のGQ20-168080-AJという型番とAX35という表記の関係です。
ブランドの実績はある。
けれど、今回の商品とそのブランドの結びつきは、まだ霧の中。
これが、現時点で言える正直な結論です。
★当ブログのオリジナル企業信頼度評価(5つ星評価)
運営体制の明確さ ★★☆(2.5)
デスク事業はシンガポールの親会社名まで公表されていますが、介護機器との関係は確認できませんでした。
日本向けの販売元情報も見当たらず、ここは厳しめの評価です。
市場での評価実績 ★★★★(4.0)
海外Amazonのリフトチェア部門で売れ筋1位を記録し、2,000件を超えるレビューで平均4.5という実績があります。
日本での実績は未知数ですが、海外での支持は本物と言えます。
商品開発の専門性 ★★★(3.0)
床からの持ち上げ、浴室用、大型対応と、目的別に製品を作り分けている点は評価できます。
ただ、今回の商品ページの表記の混在は、品質管理の甘さを感じさせます。
社会的・文化的な取り組み ★★★(3.0)
デスク側で国際デザイン賞を受賞し、人間工学に基づく「健康的な暮らし」を掲げています。
介護分野での社会的な取り組みは、今回は確認できませんでした。
財務情報の開示度 ★★(2.0)
資金調達の記録は外部サイトにあるものの、公式な財務情報は見当たりません。
非上場の若いブランドとしては珍しくない水準です。
総合評価 ★★☆(2.9)
海外での販売実績と評価は確かなものがあり、介護リフトの分野では一定の地位を築いています。
一方で、日本での販売体制と商品表記の不整合が大きなマイナスです。
購入するなら、販売元とサポート窓口を必ず確認してからにしてください。
商品紹介「MAIDeSITe電動起立補助座椅子GQ20-168080-AJ」



商品詳細
- 色:グレー
- 商品の重量:16.3キログラム
- 商品の寸法:72.7奥行き×65.7幅×50.7高さcm
- シート幅:36センチメートル
- 主な用途:床に座り込んだ状態から電動でゆっくり持ち上げ、安全な姿勢までサポート
- 移乗方法:持ち上げた後、立ち上がらずに座ったままベッド・ソファ・車椅子へ移乗
- 本体重量:約16.3kg
- 耐荷重:約160kg
- 持ち運び:ドアや狭い通路もスムーズに通過できる設計
- 操作方法:「上昇」「下降」のボタン操作
- 緊急停止機能:搭載
- リモコン:手元で操作できるリモコン式
- 使用場面:家庭での介護から施設での使用まで
- アームレスト:跳ね上げ式
- 安全装備:安全ベルト、後輪ストッパー
- 座面設計:座面前部を低くした低床設計
- 負担軽減:利用者の脚や腰、介助者の負担軽減
良い口コミ
「母が居間で尻もちをついた時、一人で起こせずに救急車を呼ぶべきか迷っていました。これがあってからは、座面に移ってもらってボタンを押すだけで済むので、気持ちが本当に楽になりました」
「持ち上げた後、そのまま車椅子に横移りできるのが助かります。一度立たせる工程がないので、ふらつく心配が減りました」
「リモコンのボタンが上昇と下降だけなので、機械が苦手な父でも迷わず使えています」
「アームレストが跳ね上がるので、ベッドの横にぴったり付けて移れます。思っていたより動きが静かでした」
「腰痛持ちの私でも、もう無理やり抱え上げなくていい。それだけで買ってよかったと思えます」
気になる口コミ
「約16kgと書いてありますが、高齢の母一人で運ぶのは無理でした。軽いというのは、あくまで介助する側の感覚だと思います」
「幅が65cm以上あるので、うちの古い家のトイレの入り口は通れませんでした。買う前に測るべきでした」
「商品ページに別の型番が書かれていて、本当にこの商品の説明なのか不安になりました」
「シート幅36cmは、体格の大きい父には少し窮屈そうでした」
「日本語の問い合わせ先がすぐに見つからず、故障した時にどうなるのか心配です」
「MAIDeSITe電動起立補助座椅子GQ20-168080-AJ」のポジティブな特色
一番の価値は、「床から持ち上げる」と「そのまま移る」が一台で完結することです。
床に座り込んだ人を立たせる時、介助者が最も危ないのは、前かがみで相手の体重を受け止める瞬間です。
この商品は、座面を床近くまで下げた低床設計なので、利用者はお尻を少しずらすだけで座面に移れます。
あとはボタンを押せば、モーターがゆっくり持ち上げてくれます。
エレベーターに乗っているような感覚です。
しかも、持ち上がった後に「立つ」必要がありません。
跳ね上げ式のアームレストを上げれば、座ったままベッドや車椅子へ横にすべるように移れます。
脚の力が弱った人にとって、立つ工程が一つ減るのは、転倒の機会が一つ減ることと同じです。
安全面の作りも丁寧です。
安全ベルトで体を固定し、後輪ストッパーで本体を止めておけるので、昇降中に椅子ごと動く不安を抑えられます。
万が一の時には、緊急停止機能ですぐに動きを止められます。
操作は「上昇」と「下降」の二つだけ。
テレビのリモコンより単純です。
耐荷重約160kgという数字も心強く、体格の大きい家族にも対応しやすい余裕があります。
そして何より大きいのが、介助者の体を守れる点です。
冒頭で「この椅子がいちばん救うのは、座る人ではありません」と書いた理由は、ここにあります。
この商品が本当に支えているのは、毎回腰を痛めながら家族を抱え上げてきた、介助する側の人です。
介助者が倒れてしまえば、在宅介護そのものが続けられなくなります。
一台の椅子が、家族の暮らしを続けるための「保険」になる。
そう考えると、この商品の役割が見えてきます。
「MAIDeSITe電動起立補助座椅子GQ20-168080-AJ」のネガティブな特色
まず確認したいのは、商品の性格です。
商品名は「起立補助座椅子」ですが、説明文の中身は、転倒後に床から持ち上げて移乗させるリフトです。
ソファやベッドから毎日立ち上がるのを助ける椅子を想像していると、使い方がずれる可能性があります。
次に、商品ページの表記の混在です。
商品名の型番と説明文の名称が一致していないため、届いた製品が説明どおりかどうか、不安が残ります。
購入前に販売元へ確認するのが安全です。
本体サイズにも注意が必要です。
幅65.7cm、奥行き72.7cmという大きさは、決して小さくありません。
説明文には「狭い通路もスムーズ」とありますが、古い住宅のトイレや廊下では通れない場合も考えられます。
約16.3kgという重さも、介助者にとっては軽くても、高齢の家族が一人で動かすには重い数字です。
シート幅36cmは、体格によっては窮屈に感じるかもしれません。
また、日本での販売元や修理対応の情報が見つけにくい点も気になります。
毎日使う介護用品だからこそ、壊れた時に誰に連絡すればいいのかは、購入前に必ず確かめておきたいところです。
最後に、介護保険の福祉用具レンタルや購入補助の対象になるかどうかは確認できませんでした。
ケアマネジャー(介護サービスの計画を立てる専門職)に一度相談してから選ぶと、無駄のない買い物になります。


他メーカーの商品との比較
VOCICAX35:説明文の「本家」とも言える存在
VOCICの公式ストアでは、AX35は4輪付きの電動トランスファーチェアリフトとして449.99ドルで販売されています。
床からの座面の高さは2.3インチ(約5.8cm)と低く、1年保証が付いています。
座面とアームレストを平らに折りたためるため、浴室や寝室にも収納しやすい設計です。
優れているのは、メーカーと型番の関係が明確で、取扱説明書も公開されている点です。
劣る点は、日本での正規販売の情報が確認できないことです。
今回の商品と仕様がよく似ているため、表記の不安が気になる人は、比較対象として必ず目を通しておきたい一台です。
MAIDeSITeCharles(JC35M3):同ブランドの定番モデル
耐荷重は約136kg(300ポンド)、本体重量は約13.6kg(30ポンド)、折りたたみ式で組み立て不要です。
今回の商品と比べると、本体は軽い一方で、耐荷重は今回の約160kgのほうが上回ります。
また、Charlesには車輪付きで部屋から部屋へ移るという発想はなく、床からの持ち上げに特化しています。
「持ち上げた後に移乗まで済ませたい」なら今回の商品、「床から立つ所まで助けてくれれば十分」ならCharlesという使い分けになります。
MangarELK:救急現場でも使われるエアクッション式
英国Mangar(マンガー)社のELKは、空気で膨らむクッション式のリフトです。
世界各地の救急隊や病院、介護施設で使われている実績があります。
最大約450kgまで持ち上げられ、浴室や廊下のような狭い場所でも使えます。
クッション本体は3.6kg、コンプレッサー(空気を送る機械)は6kgで、たたんで持ち運べる点も優れています。
一方で、価格は大きな壁です。
英国の販売サイトでは2,080ポンドで販売されており、家庭で気軽に買える金額ではありません。
また、膨らませた後に車椅子へ横移りする機能はないため、移乗まで一台で済ませたい人には向きません。
比較から見えたこと
耐荷重と信頼性の高さで選ぶならMangarELK。
価格と移乗のしやすさのバランスで選ぶなら、今回の商品やVOCICAX35。
ただし今回の商品は、表記の不整合と日本でのサポート体制の不透明さが、他の候補に比べて明確な弱点です。
まとめ
床に座り込んだ家族を前に、何もできずに立ちつくす。
その数分間をなくしてくれるのが、「MAIDeSITe電動起立補助座椅子GQ20-168080-AJ」です。
ボタン一つで持ち上げ、立たずにそのまま車椅子へ。
本当に救われるのは、毎回腰を痛めてきた介助者の体です。
ただし、商品ページの表記の食い違いや、日本でのサポート窓口の分かりにくさは、見過ごせない弱点です。
畳の部屋やこたつが残る家ほど、この悩みは身近なものです。
まずは今日、メジャーを一本手に取って、家の廊下とトイレの入り口の幅を測ってみてください。
65.7cmという数字と見比べるだけで、この一台が自分の家に合うかどうか、はっきり見えてきます。




