防災バッグは買った日にはまだ完成していません
はじめに
2024年8月、初めて「南海トラフ地震臨時情報」が発表された夜を覚えているでしょうか。
翌日から、店頭の保存水や簡易トイレが次々と棚から消えていきました。
慌てて通販で防災セットを注文し、届いた箱を押し入れにしまって、それきり。
そんな経験に、思わずうなずく人も多いはずです。
今年の夏には熊本県で大きな地震が起き、9月の防災月間を迎えて「うちの備え、あれで本当に大丈夫だったかな」と不安がよみがえった方もいるでしょう。
防災セットは、どれも似たように見えます。
けれど中身を一つずつ読み解くと、作り手の考え方がはっきり表れます。
今回取り上げるのは、防災士の監修を掲げるブランド「防災のミカタ」と、その2人用セット「防災バッグbosai-blackpr-2」です。
スマホの充電器をあえて乾電池式にした理由。
体育館の硬い床を想定したエアーベッド。
マスクや体拭きシートといった、避難所での感染症対策。
細かな選択の裏には、「いざという時に本当に使えるか」という問いが見えてきます。
一方で、運営会社の情報がネット上で食い違っていたり、2人分としては心細い点も見つかりました。
良いところも気になるところも、包み隠さずお伝えします。


防災のミカタとは
企業詳細
ブランドの理念
防災のミカタは、防災セットや簡易トイレ、非常食などを扱う防災用品のブランドです。
公式ストアでは、もしもの時に本当に役立つ製品を作り続けることを理念に掲げ、製品開発と改善に取り組んでいると説明しています。
言葉としてはよくある理念に見えます。
ただ、このブランドは「実際に使ってみた」という検証の姿勢を前面に出している点が特徴です。
製造元はクルーズカンパニー株式会社
公式ストアの「防災のミカタについて」のページには、製造元の会社情報が掲載されています。
社名はクルーズカンパニー株式会社で、代表取締役は土岐俊充氏です。
本社は大阪市中央区安土町の大阪国際ビルディング21階にあり、東京都千代田区東神田に東京支社を置いています。
設立は1984年11月15日、資本金は2000万円、従業員数は30名と記載されています。
取引銀行としてみずほ銀行と三井住友銀行の名前も挙げられています。
取引銀行まで公開している点は、小規模な通販ブランドとしては誠実な部類に入ります。
なお、従業員数は情報源によって数字がばらつきます。
口コミサイトの転職会議では従業員数を50人としており、企業データベースのSalesNowでは社会保険の加入者数をもとに正社員規模を24名と推定しています。
集計の基準が違うため、どれか一つが誤りとは言い切れません。
数十名規模の中小企業と捉えておくのが妥当です。
本業はアパレル・雑貨、防災は新しい柱
ここは見落としやすいポイントです。
クルーズカンパニーの事業内容には、アパレル・雑貨、食品、美容関連商品の企画・製造・販売と、システム開発事業が並んでいます。
防災の専業メーカーではありません。
口コミサイトのOpenWorkでは昭和45年創業とされ、「豊天商店(ブーデンショウテン)」などのブランドを展開している企業と紹介されています。
豊天商店は、ひねりの効いたデザインのTシャツで知られるブランドです。
過去にはSKE48とのコラボ商品も発表しています。
会社の沿革を見ると、平成16年にヨドバシカメラ梅田店へ直営店を出し、同じ年に豊天商店のライセンス事業も始めています。
その後はヨーロッパや上海、ラスベガスの展示会にも出展してきました。
つまり、商品企画と販売のノウハウを長く積み上げてきた会社が、防災という分野に乗り出した形です。
企画力や販売力はあっても、防災の専門性は外部の資格者の監修で補っている、と見るのが自然でしょう。
監修体制と「2泊3日」の検証
防災のミカタの商品には、防災士の監修がうたわれています。
公式ストアでは、日本防災士機構の防災士と、防災安全協会の災害備蓄管理士が監修していると説明しています。
さらに、一般社団法人防災安全協会が災害時に有効で安全と認めた製品に与える「防災製品等推奨品マーク」を取得しているとしています。
開発の過程についても具体的な記述があります。
防災バッグだけで過ごす2泊3日の避難訓練を行い、防災士が300点以上の商品を実際に使って検証したそうです。
机の上で選ぶだけでなく、実際に一晩を過ごして選別した、という話は説得力があります。
ただし、訓練の記録や検証の詳細なデータは、公式サイト上では確認できませんでした。
ここは今後の情報公開に期待したい部分です。
販売チャネルと商品ラインナップ
販売の窓口は複数あります。
公式ストアのほか、楽天市場、Amazon、メルカリShopsにも「防災士が開発した防災グッズ専門店」として出店しています。
企業や団体向けの大口注文の窓口も用意されています。
公式ストアには、1人用45点や2人用68点の防災セット、9日分33品の非常食セット、50回と100回から選べる簡易トイレなどが並んでいます。
簡易トイレは国産製造で15年保存をうたう商品で、自治会や企業向けの大口専用プランまであります。
防災セットだけでなく、トイレや食料の単品でも備えを組み立てられるラインナップです。
興味深いのは、2人用68点のセットが公式ストアに2系統あることです。
一方は「防災士監修」、もう一方は「災害備蓄管理士監修」と表記され、リュックの仕様や価格も異なります。
購入時は、どちらの系統なのかを商品ページで確かめておくと安心です。
ネット上で食い違う運営会社の情報
調べていて引っかかったのが、運営会社をめぐる情報の食い違いです。
ある個人の記事では、防災のミカタの企画・販売元を株式会社MT-NETとし、設立を1992年と紹介しています。
しかし公式ストアに記載された製造元はクルーズカンパニー株式会社で、設立年も異なります。
当ブログでは、公式ストアの記載を一次情報として採用しました。
別のレビューサイトでも、運営元はクルーズカンパニー株式会社で大阪と東京に拠点があると紹介されています。
また、楽天市場の店舗説明には、和のライフスタイルを提案するお店という文言が残っています。
もともと別の商材を扱っていた店舗を、防災用品向けに切り替えた可能性もうかがえます。
細かな点では、公式ストアの送料表記にも揺れがありました。
同じページ内に「3900円以上で送料無料」と「全商品送料無料」の両方の記載があります。
どちらも大きな問題ではありません。
ただ、命を預ける道具を選ぶ以上、こうした情報の整理はもう一歩丁寧であってほしいところです。
当ブログの見立て
まとめると、防災のミカタは「長い商売の歴史を持つ大阪の企画会社が、防災の資格者と組んで立ち上げたブランド」です。
会社の実体ははっきりしており、所在地や資本金、取引銀行まで公開されています。
一方で、防災そのものの専門性は監修者に依存しており、検証データの公開も限られています。
信頼できる土台はあるものの、情報発信の精度にはまだ伸びしろがある。
それが現時点での率直な評価です。
★当ブログのオリジナル企業信頼度評価(5つ星評価)
運営体制の明確さ ★★★★(4.0)
公式ストアに製造元の社名、代表者、本社と支社の所在地、設立年、取引銀行まで明記されています。
一方で、ネット上には別の会社名を挙げる記事もあり、情報の食い違いを完全には解消できていない点で満点は見送りました。
市場での評価実績 ★★★★(4.0)
楽天市場のランキング上位の実績をうたい、公式ストアの商品名にも比較サイトで紹介された旨が添えられています。
ただしランキング実績の多くは自社発信であり、第三者による継続的な評価の蓄積はこれからの段階です。
商品開発の専門性 ★★★☆(3.5)
防災士と災害備蓄管理士の監修に加え、2泊3日の避難訓練と300点以上の検証をうたう姿勢は評価できます。
とはいえ母体は防災の専業メーカーではなく、検証の記録も公開されていないため、この点数に留めました。
社会的・文化的な取り組み ★★★(3.0)
自治会や自治体、企業向けの大口注文に対応し、SNSでも防災の情報を発信しています。
一方で、地域の防災活動への参加や寄付といった具体的な取り組みは、公式情報の中では確認できませんでした。
財務情報の開示度 ★★☆(2.5)
資本金と取引銀行は公開されていますが、売上高や利益などの業績は確認できませんでした。
未上場の中小企業としては一般的な水準で、開示義務がない範囲では健闘していると言えます。
総合評価 ★★★☆(3.4)
会社の実体は明確で、防災の資格者と組んだ商品づくりにも誠実さが感じられます。
情報の食い違いの整理と検証データの公開が進めば、さらに安心して選べるブランドになりそうです。
商品紹介「防災バッグbosai-blackpr-2」



商品詳細
- セット名:プレミアム2人用
- 個数:68
- バッグ:多機能リュック
- 明かり・情報収集:ランタン、ラジオライト
- 電源:乾電池式モバイル充電器、単三乾電池、単四乾電池
- 寝具・防寒:エアーベッド、4層アルミシート、カイロ
- 暑さ対策:クールタオル
- 衛生用品:歯ブラシセット、非常用トイレ、個包装マスク、からだ拭きシート
- 救急・作業用品:絆創膏、軍手
- 雨具:レインコート
- 食品:アルファ米(梅じゃこご飯、五目ご飯、わかめご飯)、非常用スイーツ
- 水関連:5年保存水、飲料水用給水袋
- 資料:防災ハンドブック、内容物一覧チェックシート
- 監修:防災士監修
- 開発時の検証:試した防災グッズは300点
- 開発時の参考:実際の被災生活経験者の声
- 想定している対策:感染症対策、熱中症対策、寒さ対策
- ラジオ・充電器の方式:発電式ではなく、すぐに使える乾電池式を採用
- エアーベッドの想定:体育館などの固い床
- 食品の賞味期限:製造より5年
- 出荷基準:賞味期限が4年以上のもの
- 賞味期限の指定:不可
- 内容物の変更:入荷状況によりパッケージや色が異なる場合、品質が同等の商品で代替する場合あり
良い口コミ
「何から揃えればいいのか分からなかったので、2人分がまとまって届いたのは本当に助かりました。」
「充電器が乾電池式なので、ハンドルを回し続けなくていいのが気に入っています。」
「エアーベッドが入っているのは珍しいと思います。避難所の床の硬さを考えると、これだけでも選ぶ価値がありました。」
「マスクが個包装なのがうれしいです。避難所で配られるのを待たなくていいので安心できます。」
「内容物のチェックシートがあるので、半年ごとの点検がやりやすくなりました。」
気になる口コミ
「乾電池が切れたら終わりなので、予備の電池を自分で買い足しました。」
「賞味期限を指定できないので、届いてみるまで何年持つのか分かりませんでした。」
「2人用といっても、家族それぞれの薬や着替えまでは入っていないので、結局あれこれ足しています。」
「写真と届いた中身の色が少し違いました。代替品の可能性があると書いてあったので仕方ないのですが。」
「水や食料が何日分なのか、商品説明だけではよく分かりませんでした。」
「防災バッグbosai-blackpr-2」のポジティブな特色
一番の魅力は、「災害の直後に、すぐ使える」ことを徹底している点です。
その象徴が、ラジオと充電器を乾電池式にした判断です。
手回しの発電式は、電池がいらない安心感があります。
けれど実際にスマホを充電しようとすると、何分も腕を回し続けなければなりません。
停電の暗闇で、余震におびえながら、腕が痛くなるまでハンドルを回す。
その姿を想像すると、電池を入れればすぐに動く方式の価値がよく分かります。
体力も時間も、災害直後にはとても貴重です。
二つ目は、避難生活の「地味なつらさ」への目配りです。
体育館の床は、想像以上に硬く、冷たいものです。
段ボールを敷いても、一晩眠ると腰や肩がきしむ。
被災した方の体験談で、繰り返し語られてきた悩みです。
このセットには、その悩みに正面から応えるエアーベッドが入っています。
眠れるかどうかは、翌日の判断力や体調に直結します。
寝具を「おまけ」ではなく必需品として扱っている点に、作り手の本気がにじみます。
三つ目は、季節を問わない対策です。
冬の避難所ではカイロと4層アルミシートが体温を守り、夏の猛暑ではクールタオルが熱中症のリスクを和らげます。
災害は、季節を選んでくれません。
真夏の停電でエアコンが止まった部屋を思い浮かべると、クールタオル1枚のありがたさが身に染みます。
四つ目は、感染症への備えです。
人が密集する避難所では、風邪や胃腸炎が広がりやすくなります。
個包装のマスクや体拭きシート、歯ブラシセットがまとめて入っているので、清潔を保つ習慣を避難先でも続けられます。
最後に、食事の「心」への配慮も見逃せません。
アルファ米は梅じゃこご飯、五目ご飯、わかめご飯の3種類。
同じ味が続くと、それだけで気持ちが沈んでいきます。
そこに非常用スイーツが加わることで、張りつめた時間の中に小さなほっとする瞬間が生まれます。
さらに、賞味期限が4年以上残ったものを出荷する基準と、内容物一覧のチェックシートがあるので、買った後の管理まで見通しが立てやすい設計です。
「防災バッグbosai-blackpr-2」のネガティブな特色
乾電池式の強みは、そのまま弱点にもなります。
電池が切れれば、ラジオも充電器も止まってしまいます。
手回しやソーラーといった予備の発電手段は、商品情報の中には見当たりません。
停電が長引く場合に備えて、予備の乾電池を別に用意しておく必要があります。
次に、量が分かりにくい点です。
提供されている商品情報には、アルファ米や保存水、非常用トイレの具体的な数量が書かれていません。
「2人で何日過ごせるのか」という、防災セットで最も知りたい情報が読み取れないのは惜しいところです。
リュックの個数も明記されていないため、2人で分けて背負えるかどうかは購入前に確認したほうが安心です。
三つ目は、中身が変わる可能性です。
入荷状況によっては、パッケージや色が違ったり、同等品に置き換わったりする場合があると明記されています。
正直な注意書きではあります。
ただ、写真と同じものが届くと思っていた人には、小さながっかりにつながるかもしれません。
賞味期限を指定できない点も、計画的に入れ替えたい人には少し不便です。
そして何より、個人ごとに必要なものは入っていません。
常備薬、眼鏡やコンタクトレンズ、生理用品、乳幼児のミルクやおむつ、ペットのフード。
これらは、どんな防災セットでも自分で足すしかない領域です。
「これさえあれば大丈夫」という商品説明の言葉を、そのまま信じ切るのは危険です。
このセットは完成品ではなく、家族に合わせて仕上げていく土台だと考えてください。


他メーカーの商品との比較
比較した2つのセット
比較対象には、同じ価格帯で人気の高い2人用セットを選びました。
一つは、大阪の株式会社G.Oホールディングスが展開する防災グッズブランド、DefendFuture(ディフェンドフューチャー)の「防災セット2人用Relief2」です。
もう一つは、LA・PITA(ラピタ)の「防災セットSHELTER(シェルター)プレミアム2人用」です。
価格と点数
防災のミカタの公式ストアでは、2人用68点のセットが防災士監修版で29,800円、災害備蓄管理士監修版で23,800円となっています。
対して、Relief2は37種72点で通常価格20,900円、5年保証が付きます。
SHELTERプレミアム2人用は21,380円です。
価格だけを見れば、防災のミカタは2社より割高です。
点数でも、Relief2のほうが多くなっています。
電源の考え方
Relief2には、モバイルバッテリー機能を備えたダイナモラジオライトが入っています。
手回しでも充電できるため、電池切れに強いのが利点です。
防災のミカタは乾電池式で、すぐに使える反面、電池が尽きれば手の打ちようがありません。
短期の避難なら防災のミカタ、長期の停電まで見据えるならRelief2に分があります。
避難生活の快適さ
SHELTERプレミアムは約30Lのリュックに、ドライシャンプーや目隠しポンチョなど女性に配慮した用品が入っています。
一方で、軍手や絆創膏、ウエットティッシュは含まれていません。
防災のミカタは軍手と絆創膏、体拭きシートを備え、さらにエアーベッドやクールタオルまで揃えています。
寝る、冷やす、温めるといった体を守る用品の厚みでは、防災のミカタが一歩リードしています。
3社に共通する弱点
気になるのは水の量です。
防災のミカタの2人用68点は、公式ストアの記載で500mlの保存水が6本です。
合計3リットルは、1人1日3リットルとされる目安で考えると、2人分の半日にも届きません。
セット全体の重さも約8.5kgあり、これ以上の水を背負うのは現実的ではありません。
水が足りないのはどのセットにも共通する課題で、自宅に箱で備蓄しておくのが前提になります。
どれを選ぶべきか
価格の手頃さと手回し充電の安心感を重視するならRelief2。
女性向けの衛生用品と価格のバランスならSHELTERプレミアム。
避難所の床の硬さや暑さ寒さまで見据え、体の負担を減らしたい人には防災のミカタが向いています。
割高な分、何に対してお金を払うのかがはっきりしているセットです。
まとめ
冒頭で、防災バッグは買った日にはまだ完成していない、と書きました。
防災のミカタの「防災バッグbosai-blackpr-2」は、乾電池式の充電器やエアーベッドなど、避難生活のしんどさを一つずつ減らす工夫が詰まった、頼れる土台です。
ただ、常備薬や眼鏡、2人が3日間過ごせるだけの水までは入っていません。
最後のピースをはめられるのは、使う本人だけです。
押し入れの奥で眠らせてしまうのは、あまりにもったいない。
今日はまず、バッグを玄関の近くに移し、スマホのカレンダーに半年後の中身チェックの予定を一件入れてみてください。
そのたった一分の手間が、いざという夜の安心を大きく変えます。




