その傘の本当の価値は開いた瞬間ではなく、閉じた瞬間に決まります。
はじめに
雨の日、駅に着いて傘を閉じる。
あの一瞬が、実は一日でいちばん憂鬱な数秒だと感じたことはないでしょうか。
濡れた面が外側にくるから、手も、スーツの袖も、通勤バッグの底も、まとめて水を吸います。
車から降りるときは、さらに厄介です。
ドアを大きく開けて、体を半分外に出して、それから傘を開く。
その数秒で肩がしっかり濡れる、あの敗北感。
「あ、それ分かる」と感じた方には、この記事はきっと役に立ちます。
日本は世界でも屈指の傘消費国と言われ、駅前のコンビニでビニール傘を買っては失くす、という循環を多くの人が繰り返してきました。
一方で、突発的な豪雨と真夏の強い日差しが同じ季節に同居するようになり、傘は「雨具」から「日除けを兼ねた装備」へと役割を変えつつあります。
ここ数年で晴雨兼用傘が売り場の主役に躍り出たのは、その空気を映した結果だと考えられます。
そんな中で、傘の常識をひっくり返す発想として広まったのが、逆折り式という構造です。
そして、その市場を日本で最初に押し広げたブランドが「CARRY saKASA(キャリーサカサ)」になります。
この記事では、CARRY saKASAというブランドの正体を、運営会社の実像まで踏み込んで解き明かします。
そのうえで、「逆折り式傘ibb-carry-sakasa」がどんな傘なのかを、提供されている仕様情報だけを根拠に整理します。
さらに、他メーカーの似たスペックの製品と、忖度なしで並べて比較します。
冒頭に書いた「閉じた瞬間に価値が決まる」という一文の意味は、本文を読み進めるうちに、はっきりと形になるはずです。


CARRY saKASAとは
企業詳細
CARRY saKASA(キャリーサカサ)というブランドを理解するには、まず「誰が売っているのか」を押さえる必要があります。
公式オンラインストアの記載によれば、運営会社はインタービジネスブリッジ合同会社、所在地は東京都練馬区中村北3-21-7 サンユー中村ビル2F、設立は2012年3月1日、代表者は深澤建臣氏、事業内容は雑貨の企画・販売となっています。合同会社という形態、そして設立から10年以上が経過している点は、いわゆる短命な販売アカウントとは性質が異なることを示しています。
社名の「インタービジネスブリッジ(Inter Business Bridge/事業と事業を橋渡しする、の意)」が示すとおり、この会社の軸足は貿易にあります。同社は自らを、IBB SHOPを運営し、CARRY saKASAなどの個性的な商品を企画開発および輸入販売して国内外に届ける会社と説明しています。興味深いのは、傘の専業メーカーではないという点です。企業情報には、3Dプリンター・IoT商品・雑貨の輸入販売事業、食品輸出、貿易コンサルティングという幅広い事業内容が並び、2015年3月にクラウドファンディングサイトMakuakeで3Dプリンター「MAESTRO」の先行販売を実施し、当時としては国内で歴代2位の支援額を集めたこと、2016年3月にはL3Dキューブでのクラウドファンディングにも成功したこと、そしてCARRY saKASAの日本総代理販売店であることが記されています。
ここで一点、正直に触れておきます。MAESTROの調達額については、資料によって2,750万円と2,970万円という異なる数字が確認できました。どちらが最終確定額なのかを断定できる一次情報には到達できなかったため、本記事では「当時の国内クラウドファンディングとして歴代上位に入る規模だった」という事実関係にとどめます。
では、CARRY saKASAそのものはどこから来たのか。ここが最も誤解されやすい部分です。Makuakeのプロジェクトページの説明によれば、CARRY saKASAは台湾のブランド「CARRY UMBRELLA」が誇る逆さ傘であり、発売から2年で全世界累計20万本を売り上げたヒット商品とされています。また「CARRY saKASA キャリーサカサ®」はインタービジネスブリッジ合同会社の登録商標(登録第5912081号)であり、逆折り式傘の構造についてはCARRY UMBRELLAが実用新案を登録済みと明記されています。
つまり構図はこうです。開発の源流は海外ブランドにあり、日本国内での商標権を持ち、企画・デザイン・販売を担っているのが日本の合同会社である、という二層構造になっています。
2016年の日本上陸時のプレスリリースでは、発売開始から台湾で11万本を売り上げた傘として紹介され、日本初上陸後に連日メディアに取り上げられたと記されています。この時点の会社所在地は東京都渋谷区宇田川町で、資本金は300万円と公表されていました。現在の練馬区への移転は、その後の変化ということになります。
上陸後の展開は、傘という地味な商材にしては驚くほど速いものでした。2016年7月には、ニューヨークアートディレクターズクラブ入選(2007年)の実績を持つ「Atelier TanTan」による切り絵デザインモデルをCAMPFIREで先行販売し、開始から1週間で目標額の100%に到達しています。その後も定番のCity Modelに加え、切り絵デザインモデル、大きくシンプルなPublic Model、そしてAQUA Modelといったシリーズを送り出してきました。2021年の発表資料では、2016年の発売以来、逆さ構造を生かした機能とファッション性を追求してきたこと、直営の楽天市場店であるIBB SHOPのほか、百貨店やブティック、通信販売でも展開していることが説明されています。2023年には「CARRY saKASA Styleシリーズ」を投入し、同社は自社を2016年より逆さ傘市場を牽引してきたブランドと位置づけています。
取扱ブランドの幅も、この会社の性格をよく表しています。CARRY saKASAのほか、Water Billy、Minimo、F-SEASONS、Vital Salveo、Moosy Life、HUROYAMAなど、機能性とファッション性を併せ持つブランドの製造販売・輸入代理販売を手掛けているとされています。
組織規模についても手がかりがあります。同社が求人媒体に掲載した紹介文では、貿易を軸に食品輸出、3Dプリンター輸入販売、雑貨輸入販売などを横断的に展開する会社であること、自社でプロダクトデザインを行い、傘の柄をデザインし、ECサイトを社内でコーディングしていること、そして9人の少数精鋭であることが述べられています。デザインからEC構築までを内製している点は、傘の柄のバリエーションが豊富な理由を説明してくれます。
現在の公式ストアはShopifyで構築され、Monogram Model、Afternoon Model、Little Lady Model、Sunshut Belle Model、Forest Model、City Model、UK Model、Classic Model、KOYOMI Styleといったモデルが並びます。サイズ展開はLadies(SSサイズ・Sサイズ)、Unisex(Mサイズ)、Mens(Lサイズ)に分かれ、City Modelは8,635円、UK Model・Afternoon Model・Sunshut Standardはいずれも8,800円という価格設定です。また同社は、日傘における独自構造「逆日傘」について特許申請済みと説明しています。
なお、Amazon上ではこのブランドの商品に「日本の中小企業」のブランド表示が付き、CARRY saKASAがインタービジネスブリッジ合同会社の登録商標であることが商品ページにも明記されています。
一方で、確認できなかった情報もあります。現在の資本金、直近の売上高、従業員数の最新値、そして商品の生産拠点の詳細です。合同会社は決算公告の義務が株式会社と異なるため、財務の外形的な把握が難しいという構造的な事情もあります。ここは断定を避け、「非公開である」という事実のみを記録しておきます。
ちなみに、今回取り上げる商品の型番表記「ibb-carry-sakasa」の先頭にある「ibb」は、社名の略称であるIBBと一致します。ただし、これを社内の正式な採番ルールと断定できる資料は見つかりませんでした。あくまで一致の指摘にとどめます。
★当ブログのオリジナル企業信頼度評価(5つ星評価)
運営体制の明確さ ★★★★(4.0)
会社名、所在地、設立年月日、代表者名が公式サイト上で明示されており、連絡先も公開されています。
設立2012年という10年超の継続実績も、評価を押し上げる材料になります。
市場での評価実績 ★★★★☆(4.5)
上陸初年度から複数のクラウドファンディングを成功させ、百貨店やブティックを含む実店舗流通に乗せてきた点は、単なるネット販売ブランドとは一線を画します。
自ら「逆さ傘市場を牽引してきた」と名乗れるだけの露出量が、実際に確認できました。
商品開発の専門性 ★★★★(4.0)
傘の専業メーカーではないため、構造そのものの開発は海外の提携ブランド側にあります。
ただし、切り絵デザインの商品化や和柄の刺繍モデルなど、デザイン面での企画力は明確に自社の強みとして機能しています。
社会的・文化的な取り組み ★★★☆(3.5)
アートディレクターとの協業や和柄の意匠化など、文化的な文脈を商品に落とし込む姿勢が見られます。
一方で、環境配慮や社会貢献に関する体系的な発信は確認できませんでした。
財務情報の開示度 ★★☆(2.5)
2016年時点の資本金300万円という記載は見つかりましたが、現在の資本金や売上規模は公開されていません。
合同会社という形態を踏まえれば標準的ではあるものの、開示度という一点では評価を高くできません。
総合評価 ★★★☆(3.7)
「実体のはっきりした小規模企業が、企画力とデザイン力で市場を切り開いた」という像が、資料から一貫して浮かび上がります。
財務の不透明さという弱点はあるものの、10年近くブランドを継続し、実店舗流通まで届けている点を重く見て、総合的には信頼できる部類に入ると判断しました。
商品紹介「逆折り式傘 ibb-carry-sakasa」



商品詳細
デザイン(内/外):無地又は柄/無地
開放時直径:110cm
全長:80cm
重さ:480g
持ち手:合皮巻き
ハンドルの素材:グラスファイバー
フレーム素材:ファイバーグラス
素材:グラスファイバー
キャノピー素材:ポリエステル
傘骨:グラスファイバーの傘骨8本
構造:逆折り式傘/自立式/巻きやすい太巻きベルト
生地構造:2重構造の2枚布
デザイン:2枚の生地のツートーンカラー
紫外線対策:UVカット99%&遮熱効果
撥水性能:テフロンコーティングによる超撥水
材質:ポリエステル
用途:晴雨兼用
良い口コミ
「車から降りるとき、ドアを少し開けるだけで傘を閉じられるので、肩が濡れなくなりました」
「閉じたときに濡れた面が内側になるおかげで、電車の中でも周りの人に気を遣わずに済みます」
「置き場所のないカフェで自立してくれるのが想像以上に快適でした」
「2枚の生地のツートーンカラーが上品で、値段以上に見えると言われます」
「480gという数字を見て重そうだと思っていましたが、持ってみると意外と軽く感じました」
気になる口コミ
「閉じたあとに水が内側にたまるので、帰宅後にきちんと開いて乾かす手間が増えました」
「開閉の動きが普通の傘と逆なので、最初の数回は戸惑いました」
「畳んだときの太さが普通の長傘より気になり、傘立てや車のドアポケットで場所を取ります」
「風の強い日は面積が大きいぶん、あおられる感覚があります」
「価格帯が一般的な傘より高めなので、失くしやすい人には勧めにくいと感じました」
「逆折り式傘 ibb-carry-sakasa」のポジティブな特色
冒頭に書いた「閉じた瞬間に価値が決まる」という一文を、ここで回収します。
この傘の設計思想は、雨をしのぐ性能そのものより、雨をしのいだ「あと」の数十秒に集中しています。
逆折り式とは、閉じたときに濡れた外側の面が内側へ折り込まれる構造のことです。
その結果、手のひらは濡れず、袖口も濡れず、抱えたバッグの側面も濡れません。
太巻きベルトが採用されているのも同じ思想の延長線上にあります。
細いベルトは、濡れた生地を押さえながら指先で探り当てる必要があり、寒い日ほど作業が苦痛になります。
太いベルトは面で押さえられるため、視線を落とさずに片手で巻き終えられます。
自立式である点も、体感の差が大きい仕様です。
傘立てのない店先、コンビニのイートイン、職場のロッカー横。
置き場所を探して壁に立てかけ、数十秒後に倒れて他人の足元へ滑っていく、あの気まずさから解放されます。
晴雨兼用としての性能も、装備として数えられる水準にあります。
UVカット99%と遮熱効果、そしてテフロンコーティングによる超撥水。
真夏の通勤で日傘として使い、夕方のゲリラ豪雨でそのまま雨傘に切り替える、という一本二役が成立します。
超撥水は見た目の派手さ以上に実利があり、水滴が生地に染み込まず玉になって落ちるため、乾きが速く、畳んだあとの重量増も抑えられます。
サイズと重量のバランスも見逃せません。
開放時直径110cmは、肩幅の広い成人男性でも肩口までしっかり収まる大きさです。
それでいて2枚布の2重構造にもかかわらず480gに収まっており、全長80cmでスリムにまとまります。
グラスファイバーの傘骨8本という構成は、金属骨に比べてしなやかで、風を受けたときに折れずに逃がす方向へ働きます。
デザイン面では、内側が無地または柄、外側が無地というツートーンの構成が効いています。
外から見たときは落ち着いた無地の面が見え、差している本人の視界には内側の柄が広がる。
自分だけが見える景色を持てる傘、という言い方ができます。
まとめると、この傘が優れているのは「雨に強い」からではありません。
雨のあとに発生する小さな不快を、構造で先回りして消しているからです。
「逆折り式傘 ibb-carry-sakasa」のネガティブな特色
正直に弱点も書きます。
第一に、乾かす手間が増えます。
濡れた面が内側に折り込まれるということは、水分が閉じ込められるということでもあります。
帰宅後に開いて乾燥させる習慣がない人には、生乾きの臭いという新しい悩みが生まれる可能性があります。
第二に、畳んだときのボリュームです。
2枚布の2重構造は、そのまま生地量の多さを意味します。
一般的な傘立てのスロットに入りにくい、車のドアポケットで存在感が出る、といった場面は想定しておくべきです。
第三に、操作の慣れが必要になります。
開き方も閉じ方も従来の傘と逆方向で、最初の数回は手が迷います。
満員の駅の出口で立ち止まって格闘する、という事態を避けるには、購入直後に自宅で数回試しておくのが賢明です。
第四に、480gという重量の受け止め方です。
軽量と表現されていますが、200g台の折りたたみ日傘に慣れた人にとっては、明確に重い部類に入ります。
長時間持ち歩く用途より、通勤や車の乗り降りといった短時間の使用に向いた重量帯だと理解しておくべきです。
第五に、提供された仕様情報の表記そのものに揺れがあります。
持ち手は合皮巻きと記載される一方、ハンドルの素材はグラスファイバーとも記載されています。
これは芯材がグラスファイバーで表面が合成皮革巻き、という意味だと推測できますが、断定できる記載ではありません。
購入前に販売ページで確認したい項目として挙げておきます。
最後に、価格です。
公式ストアのモデルは8,000円台の設定であり、傘としては明確に高価格帯に属します。
傘を失くしやすい自覚がある人にとって、この価格は率直に言ってリスクになります。


他メーカーの商品との比較
同じ土俵に立つのは、長傘タイプの逆さ傘
比較対象として、スペックが近い長傘タイプの逆さ傘を並べます。
VERILADYの逆さ傘は、開くと直径108cm、全長78cm、重さ500gという仕様です。YOKITOMOの長傘逆さ傘は、全長80cm、弧長122cm、直径111cm、重量約550g、親骨は炭素繊維とアルミニウム合金、中棒はスチール、持ち手はABSという構成になっています。
対する本商品は直径110cm、全長80cm、480gです。
数字だけを見れば、直径はほぼ横並び、重量は本商品が最も軽いという結果になります。
重量と骨材で見えてくる設計思想の違い
480g、500g、約550g。
差は最大でも70g程度で、体感で明確に区別できる幅とは言い切れません。
ただし、骨材の選び方には思想の差が出ています。
本商品はグラスファイバー、YOKITOMOは炭素繊維とアルミニウム合金の組み合わせです。
前者はしなって風を逃がす方向、後者は剛性で受け止める方向と整理できます。
どちらが優れているかは一概に決められず、突風の多い環境ではしなやかさが、日常的な使用では剛性が有利に働く場面が多くなります。
機能面で本商品が劣る点
ここは忖度せずに書きます。
VERILADYはワンタッチ開閉と手離れするC型手元、さらに反射テープを備えています。YOKITOMOもC型手元を採用し、収納ポーチが付属します。
一方、本商品の提供仕様に記載があるのは合皮巻きの持ち手までで、C型手元、ワンタッチ開閉、反射テープ、収納ポーチについての記載はありません。
腕にかけて両手を空けたい人、夜間の視認性を重視する人にとって、この差は無視できません。
価格という最大の争点
CARRY saKASAの公式ストアでは、City Modelが8,635円、他の主要モデルが8,800円で販売されています。
これに対し、逆さ傘というカテゴリー全体では2,500円前後から3,000円程度の商品が数多く流通しています。
同じ「逆折り式・自立式・晴雨兼用」という説明文でも、価格は3倍近く開くことになります。
この差を埋めるのは、テフロンコーティングによる超撥水、2枚生地のツートーンによる意匠、そして10年近く市場に残ってきたブランドの継続性です。
数値スペックだけで選ぶなら、正直に言って割高です。
意匠と長期供給の安心感に価値を置く人だけが、この価格差を納得できます。
折りたたみタイプという別解
逆折り式の折りたたみ傘には、220g程度の超軽量モデルも存在します。
常時カバンに入れておきたいなら、長傘との勝負は成立せず、折りたたみ側の圧勝です。
長傘タイプが有利なのは、開放時の面積と自立性、そして手元の操作感を求める場合に限られます。
まとめ
傘は、一年のうち数十日しか使わない道具です。
だからこそ、使う日の体験がすべてを決めます。
CARRY saKASAは、台湾発の逆折り構造を日本市場に持ち込み、練馬に拠点を置く9人規模の会社が10年近く育ててきたブランドでした。
数字の派手さではなく、切り絵や和柄といった意匠で勝負してきた足跡が、資料の随所に残っています。
逆折り式傘「ibb-carry-sakasa」は、直径110cm、480g、UVカット99%、テフロンコーティングという構成で、猛暑とゲリラ豪雨が同居する今の季節にかみ合う一本です。
ただし万能ではありません。
乾かす手間は増え、畳めば太くなり、価格は同カテゴリーの3倍近い。
それでも「閉じた瞬間の不快」を消したい人にとっては、支払う価値のある差額になります。
今日からできる小さな一歩を、ひとつだけ。
次に雨が上がったとき、自分がどんな順番で傘を閉じ、どこが濡れたかを一度だけ観察してみてください。
手のひらか、袖か、バッグの底か。
その一箇所が特定できたら、あなたにとって逆さ傘が必要かどうかの答えは、もう出ています。




