11本のうち毎日使うのは数本だけでもこのセットは損になりません
はじめに
キッチンツールは、気づくと増えています。
百円ショップのお玉、昔もらったフライ返し、いつ買ったか覚えていない菜箸。
引き出しを開けるたびに色も素材もバラバラで、ため息が出る人も多いはずです。
食料品の値上げが続き、家で作る日が増えた人もいるなかで、毎日握る道具の使い心地は意外と気分を左右します。
とはいえ、一本ずつ選び直すのは面倒です。
そこで候補に挙がるのが、まとめて揃う「セット品」です。
今回取り上げるのは、IRISOHYAMA(アイリスオーヤマ)の「IRISOHYAMAキッチンツール11点セットH102918F」です。
天然木の持ち手とシリコーンのヘッドを組み合わせ、グレージュでまとめた11点にツールスタンドが付きます。
ただ、11点もあると「本当に全部使うの?」という疑問も浮かびます。
正直に言えば、全部を毎日使う人はほとんどいないはずです。
この記事では、IRISOHYAMAがどんな会社なのかを深掘りしたうえで、このセットの良い点も気になる点も、他メーカーとの比較も含めて包み隠さず紹介します。
冒頭の一文の意味も、読み終えるころには分かるはずです。


IRISOHYAMAとは
企業詳細
東大阪の小さな町工場から始まった
アイリスオーヤマの出発点は、1958年に先代の大山森佑が東大阪で創業した、プラスチック製品の下請け加工を行う小さな町工場「大山ブロー工業所」です。
転機は東京五輪の年に訪れます。
1964年7月、父の逝去を受けて19歳の大山健太郎が代表に就任しました。当時の主力は工業用薬品瓶などの下請け生産で、年商は500万円、従業員は5名ほどの規模でした。
現在の巨大グループを思うと、驚くほど小さなスタートです。
社名の「ブロー」は、プラスチックを膨らませて容器を作る「ブロー成形」に由来します。
主にシャンプー容器や工業用の薬品容器などを作っていたことが、社名に残っていたわけです。
苦い決断が企業理念の土台に
1971年に大山ブロー工業株式会社を設立し、翌1972年には仙台工場(現在の大河原工場)が完成します。
その後、オイルショック後の厳しい時期に会社は大きな決断を迫られます。
1978年に大阪の本社工場を閉鎖し、仙台への異動に応じた従業員はわずか5名でした。結果として仲間を手放すことになった苦い経験が、のちの企業理念につながったと同社は振り返っています。
「どんな時代でも利益を出せる仕組みをつくる」という同社の考え方には、この痛みが刻まれています。
下請けから「需要をつくるメーカー」へ
下請けを脱した同社は、暮らしの道具で新しい市場を次々と切り開いていきます。
沿革を見ると、1981年にガーデン用品、1987年にペット用品、1988年に収納用品を発売しています。
1980年代は園芸用品でガーデニングブームを牽引し、1990年代には「ペットはファミリー」という考え方を打ち出してホームセンターでの市場を広げたとされています。
本拠地も東北へ移ります。
1989年に本社を仙台市へ移し、1991年にアイリスオーヤマ株式会社へ社名を変更しました。1992年には角田I.T.P.が完成し、同じ年に米国法人も設立しています。
強みは「メーカーベンダー」と「ユーザーイン発想」
同社を語るうえで外せないのが、企画から製造、販売までを一体で手がける「メーカーベンダー」という事業モデルです。
メーカーでありながら問屋の役割も兼ねるため、売り場の声を商品開発に早く反映できます。
もう一つの柱が「ユーザーイン発想」です。
作り手の効率や技術を優先するのではなく、生活者の目線で不満や不便を解決するという考え方で、年間1,000点以上の新商品を開発し、取り扱う商品は約3万点にのぼります。
今回のキッチンツールも、こうした膨大な商品群の一つです。
家電・食品へと広がった事業
家電メーカーとしての顔は、実はそれほど古くありません。
本格的な家電進出の足がかりは2009年に参入したLED照明事業で、家電量販店との取引が広がるなかで「既存の家電は複雑で高すぎる」と気づき、シンプルな製品で冷蔵庫やエアコン、テレビにまで領域を広げたとされています。
2025年の米不足でも、同社の名前を目にした人は多いはずです。
パックごはんが精米の代わりとして好調に推移し、政府備蓄米の随意契約を結んでいち早く販売を始めたことで認知が広がり、食品事業は前年比140%の590億円まで伸びました。
会社概要と業績
本社は宮城県仙台市青葉区五橋2-12-1で、代表取締役社長は大山晃弘氏、資本金は1億円、従業員数はグループ13,671名・単体6,223名(2025年1月時点)です。
業績は決算速報として公表されています。
2025年度のグループ32社の売上高は前年比2.4%増の7949億円でした。2021年度に過去最高の8100億円を記録したあと2年連続で減収となり、2023年度には7540億円まで落ち込んでいました。
経常利益は19.5%増の454億円に拡大し、2026年度は過去最高を更新する売上高8640億円を目指すとしています。
忖度なしで見た気になる点
良い面ばかりではありません。
同社は株式を上場していないため、上場企業のような詳細な有価証券報告書は公開されていません。
公表されているのは決算速報が中心で、事業ごとの利益構造まで外部から細かく確かめることは難しい状況です。
また、商品数が約3万点と膨大なぶん、一つひとつの商品にかけられる開発の深さには限界もあるはずです。
専門メーカーのような「この一本にこだわり抜いた」道具を求める人には、物足りなさが残る可能性があります。
低価格と幅広さが魅力である一方、それが弱点の裏返しにもなっている点は押さえておきたいところです。
★当ブログのオリジナル企業信頼度評価(5つ星評価)
運営体制の明確さ ★★★★★(5.0)
本社所在地、代表者、資本金、従業員数がすべて公開されています。
創業から60年以上の沿革も公式に整理されており、実体の確認に迷う点はありません。
市場での評価実績 ★★★★★(5.0)
グループ売上高は約8000億円規模に達し、家電量販店からホームセンターまで幅広い売り場に商品が並んでいます。
園芸やペット用品で市場をつくってきた実績も含め、評価は十分です。
商品開発の専門性 ★★★★(4.0)
年間1,000点以上の新商品を生み出す開発力は国内でも屈指です。
ただ、幅広さを優先する分、特定ジャンルを深く極めた専門メーカーと比べると一歩譲る面もあります。
社会的・文化的な取り組み ★★★★(4.0)
東北に本拠を置き、福島県南相馬市での工場稼働など復興支援を掲げた取り組みを進めています。
米不足の時期に備蓄米の販売へ素早く動いた点も、暮らしを支える企業としての姿勢がうかがえます。
財務情報の開示度 ★★★(3.0)
非上場ながら、毎年の決算速報で売上高や経常利益を公表しています。
一方で、上場企業並みの詳細な財務資料は確認できないため、この評価にとどめます。
総合評価 ★★★★☆(4.2)
実体の確かさと市場での実績は申し分なく、安心して商品を選べるメーカーです。
財務の細部が見えにくい点はあるものの、日常の道具を任せる相手としての信頼度は高いと判断します。
商品紹介「IRISOHYAMAキッチンツール11点セットH102918F」



商品詳細
- 材質:シリコーン
- 色:グレージュ
- サイズ:11点セット
- 商品の重量:1.18キログラム
- セット内容:フライ返し、お玉、スプーン深、スプーン浅、パスタシャベル、ヘラ、穴あきお玉、菜箸、トング、泡立て器、ハケ、ツールスタンド
- フライ返し:幅約8×長さ約32.5cm
- お玉:幅約7.7×長さ約31cm
- 穴あきお玉:幅約8.7×長さ約31cm
- スプーン深:幅約7×長さ約31.8cm
- スプーン浅:幅約6.8×長さ約31.8cm
- パスタシャベル:幅約6.5×長さ約31.5cm
- ヘラ:幅約6×長さ約31.6cm
- ハケ:幅約4×長さ約26.5cm
- 泡立て器:幅約6.5×長さ約26cm
- トング:開いた時幅約11×長さ約26cm/閉じた時幅約4×長さ約27.2cm
- 菜箸:長さ約30cm
- ツールスタンド:幅約10.5×奥行約10.5×高さ約16.5cm
- 品質表示(各ツール):【持ち手】天然木、【ヘッド】シリコーン
- 品質表示(菜箸):シリコーン
- 品質表示(泡立て器):【持ち手】天然木、【ヘッド】シリコーン(心材ステンレス鋼)
- 品質表示(トング):【持ち手】ステンレス鋼、【ヘッド】シリコーン
- 品質表示(スタンド):ポリプロピレン
- 耐熱温度:シリコーンヘッド部分200℃
良い口コミ
「バラバラだった調理道具が同じグレージュでそろって、キッチンを見るたびに気分が上がりました」
「シリコーンのヘッドなので、フッ素加工のフライパンにガリッと当たる音がしなくなって安心です」
「お玉とスプーンが二種類あるので、汁物と炒め物で使い分けられて洗い物の段取りがラクになりました」
「天然木の持ち手は手になじみやすく、プラスチックより温かみがあって握り心地が好きです」
「パスタシャベルとトングがあるので、麺をすくう日も取り分ける日も困りません」
気になる口コミ
「11本を一つのスタンドに立てると、取り出すときにほかのツールが引っかかることがあります」
「泡立て器とハケは、お菓子作りをしない我が家ではほとんど出番がありません」
「木の持ち手なので、浸け置きや乾かし方には気をつかいます」
「重さが1キロ以上あって、スタンドごと移動させるのは少し大変でした」
「グレージュは汚れが目立たない反面、カレーの色移りが気になりそうです」
「IRISOHYAMAキッチンツール11点セットH102918F」のポジティブな特色
一番の魅力は、調理の「探す時間」がなくなることです。
引き出しの奥から菜箸を発掘し、フライ返しを片手で探す。
そんな小さなストレスは、毎日積み重なるとかなり疲れます。
ツールスタンドに11点が立っていれば、手を伸ばすだけで目当ての道具がつかめます。
ここで冒頭の一文を回収します。
「11本のうち、毎日使うのは数本だけ。それでもこのセットは、損になりません。」
理由は、出番の少ない道具ほど「必要な日に手元にあるか」が勝負だからです。
年に数回のハンバーグのつや出しでハケが要る日、急にメレンゲを泡立てたくなった日。
そのときに家にあるかどうかで、料理の選択肢が変わります。
普段眠っている数本は、ムダではなく保険として働きます。
素材の組み合わせにも理由があります。
ヘッドはシリコーンなので、フライパンや鍋の表面を傷つけにくい設計です。
耐熱温度はシリコーンヘッド部分で200℃あり、炒め物や煮込み料理といった日常の加熱調理に使える範囲をカバーしています。
持ち手は天然木で、金属のように熱くなりにくく、手のひらにやさしい感触です。
道具ごとの「深さの違い」も見逃せません。
スプーンは深いタイプと浅いタイプの二種類があり、汁気の多い炒め物と、ソース作りや少量の取り分けで使い分けられます。
お玉も穴あきと通常の二本があるので、煮物の具だけをすくう、スープをよそう、という作業を一本で無理にこなす必要がありません。
長さが約26〜32.5cmにそろっている点もポイントです。
深めの鍋でも手が湯気に近づきにくく、それでいてスタンドに立てたときに極端な凸凹が出にくい寸法です。
そして見た目です。
グレージュという灰色とベージュの中間色は、白いキッチンにも木目のキッチンにもなじみます。
「生活感が出るから道具は隠したい」と思っていた人でも、出しっぱなしにできる色合いです。
「IRISOHYAMAキッチンツール11点セットH102918F」のネガティブな特色
まず、11点すべてを使い切れる人は限られます。
泡立て器やハケ、パスタシャベルは、料理のジャンルによっては一年に数回しか出番がないかもしれません。
「とにかく少ない道具で暮らしたい」という人には、多すぎるセットです。
置き場所の問題もあります。
ツールスタンドは幅約10.5×奥行約10.5cmの正方形に近い形で、ここに11本を立てると、かなり密集します。
狭いコンロ横に置くと、取り出すたびに隣の道具と干渉する可能性があります。
スタンドの設置場所は、購入前に一度測っておくと安心です。
耐熱温度200℃は、あくまでシリコーンヘッド部分の数値です。
天然木の持ち手やポリプロピレンのスタンドは同じ温度に耐えるとは書かれていないため、コンロのすぐそばや熱いフライパンの縁に立てかけるのは避けたほうが無難です。
揚げ物の油の中に長く入れっぱなしにする使い方も、ヘッドの耐熱温度を考えると慎重になりたいところです。
天然木の持ち手は、一般的に水分や乾燥に弱いとされます。
提供された情報には食器洗い乾燥機への対応可否が書かれていないため、使える前提で考えるのは危険です。
手洗いで済ませ、洗ったらしっかり乾かす手間は見込んでおきましょう。
最後に重さです。
セット全体で1.18キログラムあり、スタンドごと持ち上げて掃除するときは、片手だと少し不安を感じる重さです。


他メーカーの商品との比較
比較の視点
比べるのは、素材、耐熱温度、お手入れのしやすさ、揃え方の4点です。
同じシリコーン系のキッチンツールでも、メーカーによって考え方がかなり違います。
山崎実業「tower(タワー)」との比較
山崎実業のtowerは、シリコーンキッチンツールを単品で展開するシリーズです。
例えばシリコーン調理トングは素材がシリコーンと芯材のナイロンで、耐熱250℃・耐冷-40℃、食洗機にも対応しています。
シリーズは全25種類あり、置いても先端が浮く清潔設計が特徴とされています。
耐熱温度と食洗機対応の明記という点では、towerが優れています。
一方で、トング1本で1,650円(税込)の販売例があり、11点を単品でそろえると総額はかなり膨らみます。
まとめて安く揃えたい人にはH102918F、こだわって数本だけ選びたい人にはtowerが向きます。
UmiteChef(海外発のシリコーンキッチンツールブランド)との比較
UmiteChefは、木製ハンドル×シリコーンという、H102918Fに近い構成のセットを販売しています。
33点セットの耐熱温度は最高230℃とされ、点数と耐熱温度の表記ではH102918Fを上回ります。
ただし、海外のレビュー要約では木製ハンドルは食洗機に入れられず手洗いが必要で、乾燥した持ち手にはオイルでの手入れが要るという声が挙がっています。
木の持ち手の手間は、どちらを選んでも避けられないと考えてよさそうです。
運営元の企業情報や国内でのサポート体制が分かりやすい点では、H102918Fに安心感があります。
同じアイリスオーヤマの7点セットとの比較
同社の公式サイトには、フライ返し、お玉、穴あきお玉、スプーン浅、ヘラ、菜箸、トングにツールスタンドを組み合わせた「KT-7SS」のグレージュも掲載されています。
持ち手は天然木、ヘッドはシリコーンで、シリコーンヘッド部の耐熱温度は約200℃と、素材の考え方は共通です。
お菓子作りをしないなら、泡立て器やハケのない7点セットのほうが、スタンドに余裕も生まれます。
比較から見えた強みと弱み
H102918Fの強みは、11点が一度で同じ色に揃う手軽さと、国内大手メーカーの商品という安心感です。
弱みは、耐熱温度と食洗機対応の明記で専用シリーズに一歩譲る点です。
「全部まとめて揃えたい」ならH102918F、「数本を長く使いたい」なら単品シリーズという選び分けが合理的です。
まとめ
キッチンツールは、一度そろえると何年も毎日握る道具です。
だからこそ、選び方ひとつで料理の気分が変わります。
「IRISOHYAMAキッチンツール11点セットH102918F」は、天然木とシリコーンを組み合わせた11点がグレージュで一気にそろうセットです。
全部を毎日使う必要はありません。
年に数回しか出番のないハケや泡立て器も、必要な日にそこにあるという安心が価値になります。
冒頭で「損にならない」と言い切ったのは、この理由からです。
一方で、食洗機での扱いや置き場所には注意が必要です。
アイリスオーヤマは、東大阪の小さな町工場から暮らしの道具を広げてきた会社で、米不足のときにも素早く動いた姿勢は記憶に新しいところです。
今日できる小さな一歩として、まずはコンロ横のスペースをメジャーで測ってみてください。
幅と奥行きが約10.5cmずつ空くなら、このセットを迎える準備はもう整っています。




