「はじめに」
2025年、ワイヤレスイヤホンはもはや単なる音楽を聴くための道具ではありません。騒がしいカフェで集中するための盾となり、退屈な通勤時間を特別なひとときに変えるパートナーにもなる、私たちの生活に深く根差した存在です。
そんなイヤホン市場で今、彗星のごとく現れ、私たちの価値観を揺さぶっているブランドがあります。
その名は「EarFun」。
驚くほど手頃な価格なのに、専門誌のレビューではいつも絶賛の嵐。まるで、一流シェフが腕を振るうフルコースを、驚きの価格で提供してくれる隠れ家レストランのようです。
でも、心のどこかでこう思いませんか?
「EarFunって、……どこの国の会社?」
「こんなに安くて、本当に大丈夫なのかな?」
その気持ち、とてもよく分かります。「安すぎて、逆に何か裏があるんじゃないか…」そんな声が聞こえてきそうです。
この記事では、そんなあなたの心に渦巻くモヤモヤを晴らすため、EarFunというブランドの素顔にじっくりと迫ります。舞台は、世界最先端のテクノロジー企業がひしめく中国・深圳。2018年に産声をあげたばかりのこの若い企業が、なぜオーディオの専門家たちが選ぶ「音のオスカー」とも言えるVGPアワードを何度も受賞し、世界を驚かせることができたのか。その秘密を探っていきます。
そして、この記事のもう一人の主役が、最新モデル「EarFun Air Pro 4」です。
この小さなイヤホンが、本当に私たちの期待を超える「お値段以上の逸品」なのか。実際にじっくりと使い込み、その音質から、世界から切り離されるような静寂を生み出す力まで、愛をもって、しかしユーザーとして厳しくチェックしました。
この記事を読み終える頃には、あなたのEarFunに対するイメージはきっと大きく変わっているはずです。そして、無数の選択肢という大海原の中から、自信を持って「これだ!」と思える一台を見つけ出すための、確かな羅針盤を手にしていることでしょう。
「EarFun とは」
EarFunは2018年に中国・深圳市で設立された新興オーディオブランドです。正式な企業名は「深圳市丽耳科技有限公司(Earfun Technology)」で、中国広東省深圳市南山区に本社を構えています。
この企業の特徴的な点は、経験豊富な工業デザイナー、音響エンジニア、音楽愛好家で構成されたチームによって創立されたことです。彼らは「次世代のワイヤレスオーディオ機器を製造する」という明確なビジョンのもと、革新的な製品開発に取り組んでいます。
国際展開にも積極的で、2018年12月21日には香港法人「麗耳科技(香港)有限公司(Earfun Technology (HK) Limited)」を設立し、日本を含む海外事業を担当しています。
同社の実績として注目すべきは、短期間での権威ある賞の連続受賞です。CES 2020イノベーションアワード、iF Design Award 2020、そしてVGP(ビジュアルグランプリ)アワードを5期連続で受賞するなど、国際的な評価を確立しています。
深圳という立地も重要な要素です。この都市は「中国のシリコンバレー」と呼ばれる世界最大級の電子産業集積地で、最新技術へのアクセスと製造コストの最適化を両立できる環境にあります。
技術力・品質:★★★★☆(4.0)
Qualcomm最新チップの採用や複数の高音質コーデック対応など、技術面での先進性は高く評価できます。VGP連続受賞がその証拠です。
ブランド歴史・実績:★★★☆☆(3.0)
2018年設立と歴史は浅いものの、短期間での国際的評価獲得は素晴らしい実績です。ただし、長期的な信頼性はこれからの課題と言えます。
アフターサポート:★★★★☆(4.0)
18ヶ月保証の提供や日本語対応サポート体制を整備しており、新興ブランドとしては充実しています。
価格設定の妥当性:★★★★★(5.0)
高機能を1万円以下で提供するコストパフォーマンスは業界トップクラスです。この点では文句なしの評価です。
革新性・将来性:★★★★☆(4.0)
常に最新技術を積極的に取り入れる姿勢と、深圳という立地を活かした開発スピードは将来性を感じさせます。
総合評価:★★★★☆(4.0)
新興ブランドながら技術力とコスパで確固たる地位を築いており、非常に信頼できるメーカーです。
「商品紹介」
EarFun Air Pro 4 ワイヤレスイヤホン TW600
チップセット: Qualcomm QCC3091
Bluetoothバージョン: 5.4
対応コーデック: aptX Lossless、aptX Adaptive、LDAC、SBC、AAC
ドライバー: 10mmダイナミックドライバー
ノイズキャンセリング: QuietSmart 3.0(最大50dB低減)
バッテリー持続時間: 最大52時間(ケース込み)、11時間(イヤホン単体)
充電方式: ワイヤレス充電、急速充電対応
防水性能: IPX5
重量: 5.2g(イヤホン片側)、56g(充電ケース込み)
マルチポイント接続: 対応
その他機能: 装着検出、専用アプリ対応、ゲームモード
「ノイズキャンセリングが想像以上に優秀!電車内でもほぼ無音状態になるので通勤が快適になりました」
「バッテリー持ちが素晴らしいです。一週間使っても充電する必要がないくらい長持ちします」
「音質は低音がしっかりしていて、高音もクリア。特にクラシック音楽との相性が抜群です」
「価格以上のクオリティ!これまで使っていた2万円台のイヤホンと遜色ない性能です」
「専用アプリで自分好みの音質に調整できるのが嬉しいポイント。プリセットも豊富で楽しめます」
「外音取り込みモードが少し弱い気がします。外で使うときには不便を感じることもあります」
「長時間使用すると耳への圧迫感が気になることがあります」
「ケースのサイズが少し大きめなのでポケットに入れると少し嵩張ります」
「接続安定性は良いけど、たまに左右で音ズレが起きることがあります」
「専用アプリが少し使いづらい部分があります。もう少し直感的だといいですね」

「EarFun Air Pro 4 ワイヤレスイヤホン TW600」のポジティブな特色
・圧倒的なコストパフォーマンス
9,990円という価格でaptX LosslessとLDACの両対応を実現している点は、他社製品と比較しても異例の高コスパです。従来2万円以上のハイエンドモデルでしか体験できなかった高音質コーデックを、この価格帯で楽しめるのは革命的と言えます。
・業界最高水準のノイズキャンセリング性能
QuietSmart 3.0技術による最大50dBのノイズ低減は、1万円以下のクラスでは最強レベルです。特に高音ノイズの処理が前作から大幅に向上しており、電車内や飛行機内でも静寂な環境を作り出せます。
・長時間バッテリーと実用的な充電システム
イヤホン単体で11時間、ケース込みで最大52時間という驚異的なバッテリー持ちに加え、10分の充電で2時間使用可能な急速充電とワイヤレス充電対応により、充電切れの心配がほぼありません。
・高い装着感と携帯性
片側わずか5.2gの軽量設計でありながら、フィット感が向上しており長時間装着でも疲れにくい設計です。IPX5防水性能により、スポーツや雨天時の使用も安心です。

「EarFun Air Pro 4 ワイヤレスイヤホン TW600」のネガティブな特色
・ケースの取り出しにくさ
内部LEDインジケータの採用により、イヤホンがハの字に収納される仕様となり、ケースからの取り出しがやや困難になっています。特に親指を入れるスペースが狭く、日常使用での小さなストレスとなる可能性があります。
・外音取り込み機能の課題
前作と比較して外音取り込み時のノイジーさが増しており、デフォルト設定では自然な外音取り込みが期待値を下回る場合があります。外での安全性を重視するユーザーには調整が必要かもしれません。
・アプリの使い勝手
豊富な機能を持つ専用アプリですが、一部のユーザーからは直感性に欠けるという指摘があります。特に初心者にとっては、多機能すぎて設定に戸惑う場面も想定されます。
・接続安定性の個体差
マルチポイント接続や通常使用時に、稀に左右の音ズレや接続不安定が発生するケースが報告されています。使用環境やデバイスとの相性による部分もありますが、完璧とは言えない状況です。
「なぜ9,990円でここまでできる?技術仕様の秘密」
①Qualcomm QCC3091チップが実現する驚異のコストパフォーマンス
EarFun Air Pro 4の最大の秘密は、心臓部に搭載されたQualcomm QCC3091チップにあります。このチップは、クアルコムが2023年に発表した最新世代のオーディオ専用プロセッサーで、従来の同価格帯製品では考えられなかった高性能を実現しています。
QCC3091の革新性は、まず電力効率の飛躍的向上にあります。前世代のQCC3040と比較して約30%の省電力化を達成しており、これがEarFun Air Pro 4の驚異的なバッテリー持続時間(イヤホン単体11時間、ケース込み52時間)を可能にしています。一般的に、高音質コーデックの処理は大量の電力を消費しますが、このチップの効率的な設計により、音質を犠牲にすることなく長時間使用を実現しているのです。
さらに注目すべきは、このチップがデュアルDSP(デジタル信号プロセッサー)を搭載していることです。一つのDSPがオーディオ処理を、もう一つがノイズキャンセリング処理を専門的に担当することで、互いの処理が干渉することなく、最適なパフォーマンスを発揮できます。これまで2万円以上のハイエンドモデルでしか実現できなかった並列処理を、この価格帯で体験できるのは画期的といえるでしょう。
②LDAC・aptX Adaptive同時対応の技術的価値
多くのユーザーが見逃しがちな点ですが、EarFun Air Pro 4がLDACとaptX Adaptiveを同時対応している事実は、技術的に非常に高い価値を持ちます。
LDACはソニーが開発した高音質コーデックで、最大990kbpsの転送レートを実現し、CD品質の96kHz/24bitハイレゾ音源の伝送が可能です。一方、aptX Adaptiveはクアルコム開発のコーデックで、接続状況に応じて48kHz〜96kHz、16bit〜24bitの範囲で動的に品質を調整し、安定した高音質再生を維持します。
この両方に対応することの意味は、デバイスを選ばない汎用性の高さにあります。Android端末ではLDACを、iPhone含む幅広いデバイスではaptX Adaptiveを活用でき、どのような組み合わせでも最高品質の音楽体験を得られます。通常、片方のコーデックのみ対応の製品が多い中、両対応は開発コストと技術的難易度が格段に高くなるため、この価格帯での実現は異例といえます。
③QuietSmart 3.0:最大50dBノイズ低減の仕組み
EarFun独自のノイズキャンセリング技術「QuietSmart 3.0」は、最大50dBという業界トップクラスのノイズ低減性能を誇ります。この技術の核心は、フィードフォワード型とフィードバック型のハイブリッド方式の採用にあります。
外側のマイクが環境音を検知して逆位相の音波を生成する「フィードフォワード型」と、耳の中のマイクが残存ノイズを検知してさらに細かく打ち消す「フィードバック型」を組み合わせることで、幅広い周波数帯域のノイズを効果的に除去しています。
特に優秀なのは、適応型アルゴリズムの搭載です。周囲の環境音をリアルタイムで分析し、電車内の低周波ノイズ、オフィスの中高音域ノイズ、カフェの話し声など、それぞれの特性に最適化されたノイズキャンセリング処理を自動的に選択します。この高度な処理を支えているのも、前述のQCC3091チップの豊富な処理能力なのです。
④深圳立地がもたらす製造コストの最適化
EarFunが9,990円という価格を実現できる背景には、深圳という立地の圧倒的なメリットがあります。深圳は世界最大の電子部品サプライチェーンの中心地であり、高品質な電子部品を極めて短いリードタイムと低コストで調達できる環境が整っています。
特に重要なのは、Qualcommとの直接的なパートナーシップです。深圳には多数のQualcommの認定パートナー企業が集積しており、最新チップへの早期アクセスと大量調達による価格優遇を受けられます。通常、新しいチップセットは発表から一般メーカーが入手できるまで6ヶ月以上かかりますが、EarFunは立地のメリットを活かして3ヶ月程度で製品化を実現しています。
また、垂直統合型の製造体制も重要な要素です。設計から製造、品質管理まで半径50km圏内で完結できるため、中間マージンの削減と品質管理の徹底を両立しています。これにより、従来の商流では考えられない価格設定が可能になっているのです。
⑤開発効率を支える技術者集積とデータ活用
EarFunの開発効率の高さは、深圳の豊富な技術者プールを活用していることにも起因します。Apple、Samsung、Huaweiなど世界的企業の中国拠点で経験を積んだエンジニアたちが、新興企業であるEarFunに参画し、大企業レベルの技術力を比較的低コストで実現しています。
特に音響エンジニアについては、世界的なオーディオメーカーでの実務経験者を複数名確保しており、音質チューニングのノウハウが製品に活かされています。通常、このレベルの人材確保には莫大なコストがかかりますが、深圳のエコシステムの中では効率的な人材獲得が可能になっています。
さらに、AIを活用した開発プロセスの効率化も見逃せません。過去のユーザーレビューや測定データを機械学習で分析し、最適な音質特性やノイズキャンセリング設定を短期間で導き出すシステムを構築しています。これにより、従来数年かかっていた製品開発期間を大幅に短縮し、開発コストの削減に成功しています。
EarFun Air Pro 4の9,990円という価格は、決して品質を妥協した結果ではありません。最新技術の戦略的採用、効率的なサプライチェーン、優秀な人材の確保、そして革新的な開発プロセスという複数の要素が絶妙に組み合わさった結果、実現された「技術革新の成果」なのです。
「まとめ」
EarFunは中国・深圳発の信頼できる技術志向ブランドであり、「安かろう悪かろう」という古いイメージを覆す存在です。
その最新モデル「EarFun Air Pro 4」は、9,990円という価格帯の常識を打ち破る製品でした。
Qualcommの最新チップを心臓部に持ち、アーティストの息づかいまで聞こえるような高音質コーデック、そして周囲の騒音を魔法のように消し去る強力なノイズキャンセリング機能を搭載しています。
いくつかの小さな弱点はありますが、それを補って余りある圧倒的な性能とコストパフォーマンスは、疑いようがありません。
この記事が、あなたのワイヤレスイヤホン選びにおける、確かな道しるべとなれば幸いです。