床で眠る夜は、ある日とつぜん、誰のもとにもやってきます
はじめに
冷えたフローリングに薄い布団を一枚。
翌朝、腰をさすりながら起き上がった経験はありませんか。
親戚が泊まりに来た夜、引っ越し直後でベッドが届かない数日、そして災害で家を離れなければならない夜。
床で眠る時間は、思っているよりずっと身近にあります。
「ベッドでも床でも、同じようにぐっすり眠りたい」。
そんな欲張りな願いに正面から応えようとしているのが、寝具ブランドのEMOOR(エムール)です。
今回取り上げる「EMOORマットレスシングルGRAND」は、厚みが約12cmあり、ブランド自ら「EMOOR史上最厚」とうたう三つ折りマットレスです。
GRANDという英単語には「堂々とした、壮大な」という意味があります。
ずいぶん大きく出た名前だな、というのが私の第一印象でした。
正直に言えば、少し疑ってもいました。
そこでこの記事では、まず運営会社がどんな会社なのかを掘り下げ、次に商品の数字を一つずつ読み解き、最後に他メーカーの三つ折りマットレスと忖度なしで比べます。
冒頭の一文に込めた意味も、読み進めるうちにきっと分かります。


EMOORとは
企業詳細
運営会社の基本情報
EMOORを運営しているのは、株式会社エムールです。
本社は東京都立川市曙町1-25-12オリンピック曙町ビル9F、代表取締役は高橋幸司氏、設立は2006年7月、資本金は4,500万円と公表されています。
事業内容として挙げられているのは、「寝る、座る、たたむ」を快適にする製品の企画開発、国内外向けECサイトの運営、体験型ショールームと販売店の運営、睡眠教育サービスの企画開発の四つです。
社名、所在地、代表者、資本金まで公式のプレスリリースで繰り返し確認できる点は、正体の見えない通販ブランドが多いなかで大きな安心材料になります。
「健康的な生活を支える道具」という考え方
同社が掲げるビジョンは「眠りで世界の人を元気にする」です。
2006年から「寝る・座る・たたむ」の三分野に絞って商品やサービスを開発し、ECサイトを運営してきたと説明しています。
面白いのは、自社の商品を「目で楽しむインテリア」ではなく「健康的な生活を支える道具」と位置づけ、睡眠学や人間工学の基礎研究と、常時2,000種類を超える商品開発力、EC販売への特化によって手に取りやすい価格を実現していると語っている点です。
おしゃれな家具屋というより、体の道具屋。
その姿勢は、今回のGRANDが「見た目」より「部位ごとの沈み込み」を前面に出していることとも一致します。
EC発ブランドとしての歩み
エムールはもともとネット通販から育ったブランドです。
創業から19年にわたり自社開発の寝具や家具を軸に、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングといった主要モールにも出店してきたと紹介されています。
そのうえで2025年10月2日に旗艦店となる公式オンラインショップを全面リニューアルし、専門ブランドならではの提案とモール並みの使いやすさの両立を目指したとのことです。
モールに頼りきらず、自社サイトで「なぜこの寝具なのか」を語る場を作り直した動きは、ブランドとしての自信の表れと読めます。
企業情報サイトの記載では、国内の主要モールに加えて、アメリカ、カナダ、ドイツ、フランスなど海外向けを含め計15サイトを運営しているとされています。
一方で、同じ情報源では従業員(社会保険の被保険者)が29名とされており、2,000種類を超える品ぞろえを少数精鋭で回している姿が浮かびます。
この人数はあくまで外部サイトの推定値なので、断定は避けておきます。
「売らない」ショールームという選択
ネット専業の寝具ブランドにとって最大の弱点は、寝心地を試せないことです。
エムールはこの弱点に、少し変わった方法で向き合いました。
2022年4月14日、東京都立川市に「EMOOR体験ショールーム」を開設し、茶室をモチーフにした完全個室でマットレスや枕をじっくり試せるようにしたのです。
しかも同社はこの空間を、商品を売るための店舗ではなく睡眠を体験してもらう場所と位置づけ、体験は無料としています。
家具店の明るい照明の下、店員さんの視線を感じながら寝転がって、結局よく分からないまま帰る。
あの気まずさを知っている人なら、この発想のありがたさがよく分かるはずです。
現在は立川と青山の体験ショールームに加え、伊勢丹立川店の常設店も案内されています。
また企業情報サイトでは、年代や性別、骨格、筋肉量、寝姿勢などから合うマットレスを提案する「パーソナライズ寝具サービス」があり、ホテルへの導入実績もあると紹介されています。
論文と学会発表という裏付け
寝具ブランドが「研究に基づく」とうたうのは珍しくありません。
ただ、エムールは中身を具体的に示しています。
代表の高橋幸司氏らによる、マットレスの寝心地を左右する要因を分析した論文が、2024年と2025年に学術誌「睡眠と環境」へ掲載され、2019年、2021年、2022年には日本睡眠学会の学術集会で発表も行っています。
2025年の論文は50〜89歳を対象にしたもので、若い世代だけを想定していないことがうかがえます。
社長自らが著者に名を連ねる寝具ブランドは、そう多くありません。
社会とのつながりと、冒頭の一文の答え
活動は商品開発の外にも広がっています。
2018年には日本人の睡眠への意識を高めることを目的に「エムールスリーププロジェクト」を始動しました。
2019年には、女子サッカーの日テレ・ベレーザに向けてパフォーマンス向上のための睡眠改善プログラムの提供を始めています。
そして、この記事の冒頭で「床で眠る夜は、ある日とつぜんやってくる」と書いた理由がここにあります。
2026年7月28日に発生した令和8年熊本地震を受け、エムールは8月3日、熊本県宇城市の避難所へ「寝具コンビニ」60セットと「ウルトラコンパクト布団2」15セット、計75セットを寄贈しました。
宇城市出身の元サッカー日本代表・巻誠一郎氏や宇城市議会副議長との連携による支援だったと発表されています。
体育館の硬い床で眠る人の体を、どう守るか。
「床でも眠れる寝具」を作り続けてきた会社だからこそ、この課題を自分ごととして受け止めたのだと感じます。
確認できたこと、確認できなかったこと
ここまでで、会社の実在性、所在地、代表者、資本金、研究活動、社会貢献はかなりはっきり確認できました。
一方で、非上場企業のため売上高や利益は公表されておらず、財務の健全性は外から判断できません。
また、GRANDを含む各商品がどこの工場で作られているのかも、今回の調査では確認できませんでした。
良い材料が多い会社ほど、見えない部分は冷静に見ておく。
それがこのブログの方針です。
★当ブログのオリジナル企業信頼度評価(5つ星評価)
運営体制の明確さ ★★★★☆(4.5)
設立年月、資本金、本社所在地、代表者名がプレスリリースで一貫して公表されています。
体験ショールームや常設店という「会いに行ける場所」があることも、通販ブランドとしては高く評価できます。
市場での評価実績 ★★★★(4.0)
主要ECモールで長く販売を続け、2025年には公式ショップを全面刷新するなど、事業の継続性ははっきりしています。
ただし第三者機関による受賞歴などは今回確認できなかったため、満点は控えました。
商品開発の専門性 ★★★★☆(4.5)
代表自らが著者に入った論文の掲載や、日本睡眠学会での複数回の発表が確認できます。
寝心地を「感覚」ではなく「要因」として分析しようとする姿勢は、寝具ブランドとして頭一つ抜けています。
社会的・文化的な取り組み ★★★★☆(4.5)
令和8年熊本地震での寝具寄贈、女子サッカーチームへの睡眠改善プログラム、睡眠教育事業と、取り組みの幅が広いのが特徴です。
売上に直結しにくい活動を続けている点に、理念の本気度が表れています。
財務情報の開示度 ★★☆(2.5)
非上場のため、売上高や利益といった数字は公開されていません。
資本金は明らかになっているものの、経営の安定性を外から判断する材料は限られます。
総合評価 ★★★★(4.0)
実在性、専門性、社会性のどれをとっても、ネット発の寝具ブランドとしては安心して検討できる水準です。
財務の見えにくさだけを頭の片隅に置いておけば、購入先として大きな不安はない会社だと判断します。
商品紹介「EMOORマットレスシングルGRAND」



商品詳細
- サイズ:シングル
- 商品の寸法:195長さ×97幅×12厚みcm
- 使用時サイズ:約97×198×12cm
- 折りたたみ時サイズ:約67×98×39cm
- 商品の重量:8.5kg
- 本体重量の内訳:ウレタン重量8.0kg
- 商品の硬さ:硬い
- トップスタイル:コイルなし
- レイヤー数:2
- 中身の素材:高反発ウレタンフォーム
- 中材:ポリウレタンフォーム約12cm
- 上層:高反発ウレタン32D/厚み約6cm(220ニュートン)
- 下層:高反発ウレタン30D/厚み約6cm(180ニュートン)
- 特徴:折り畳み式(三つ折り)
- 設計:特殊3Dカットと触感5ゾーン設計(オプティマル3Dカット)
- 頭部・足:細かなカッティングによる軽い触感
- 肩甲骨・ふくらはぎ:やや硬め、横向き寝で肩が沈み込む設計
- 臀部:しっかりとした支持性で正しい寝姿勢(S字カーブ)に
- 下層部:コシのある高支持性でマットレスの形状を保持
- カバーの素材:ポリエステル
- アウターカバー表面・側面:ポリエステル95%、ポリウレタン5%(膨れニット生地、ピリング加工)
- アウターカバー底面:ポリエステル100%(メッシュ生地)
- インナーカバー:ポリエステル100%(天竺ニット)
- カバーの手入れ:外して洗える
- 使用方法:ベッドマットレスとしても床に直接敷いても使用可
- シーツ併用:付属カバーの上から市販のBOXシーツやフィットシーツを使用可
- 用途:使わないときは畳めて来客用にも便利
良い口コミ
「フローリングに直接敷いても、床の硬さをまったく感じません。12cmの厚みは伊達ではありませんでした。」
「仰向けでもお尻が沈みすぎず、朝起きたときの腰の重さが前のマットレスより軽く感じます。」
「横向きで寝ると肩だけがふわっと沈んでくれるので、腕のしびれで夜中に起きることが減りました。」
「三つ折りにして壁に立てかけておけるので、日中はワンルームの床が広く使えます。」
「カバーを外して洗えるのが助かります。市販のボックスシーツもそのまま使えました。」
気になる口コミ
「硬めの寝心地なので、ふかふかのベッドに慣れていた私は最初の数日、少し戸惑いました。」
「8.5kgあるので、毎朝たたんで押し入れにしまうのは正直しんどいです。」
「たたんでも高さが39cmあり、思っていたより押し入れのスペースを取りました。」
「床に敷きっぱなしにしていたら、裏側が少しひんやり湿っぽく感じた日がありました。」
「届いた直後はウレタン特有のにおいが少し気になりました。」
「EMOORマットレスシングルGRAND」のポジティブな特色
一番の魅力は、厚み約12cmが「床でも妥協しない」ための数字になっている点です。
薄い敷布団を床に敷くと、寝返りのたびに腰骨がゴツンと床に近づく感覚があります。
GRANDは約6cmずつの高反発ウレタンを2層重ねているので、体と床のあいだに十分な距離が保たれます。
二つ目は、層ごとに役割がはっきり分かれていることです。
上層は220ニュートン、下層は180ニュートンと表記されています。
ニュートンは「押したときの手応え」を表す数字で、大きいほど硬くなります。
つまりGRANDは、体に触れる上の層をしっかりめにし、下の層で全体を支える構成です。
密度も上層32D、下層30Dと記載されていて、Dはウレタンの詰まり具合を示します。
三つ目は、上層に施された5つのゾーン分けです。
軽い頭と足先には細かい切り込みで柔らかさを、負担のかかる肩甲骨とふくらはぎにはやや硬めの感触を、一番重いお尻にはしっかりした支えを。
例えるなら、体の部位ごとに違う人がそっと手を添えて支えてくれるような設計です。
横向きで寝たときに肩が沈むよう作られているのも、横向き派にはうれしいポイントです。
四つ目は、暮らしへのなじみやすさです。
三つ折りにできるので、平日は自分のベッドとして使い、年末年始に家族が帰省したときは客間の床へ移す、という使い回しができます。
カバーは外して洗えますし、市販のボックスシーツやフィットシーツも重ねられます。
裏面には通気性のよいメッシュが使われ、寝ているあいだにこもる熱を逃がす設計です。
表面の膨れニットにはピリング加工、つまり毛玉ができにくくする加工が施されていて、肌ざわりへの配慮も見えます。
「ベッドマットレスか、布団か」。
この二択で迷い続けてきた人にとって、GRANDは「両方を一枚で」という第三の答えになり得ます。
「EMOORマットレスシングルGRAND」のネガティブな特色
まず、硬さの表記が「硬い」である点は見逃せません。
沈み込むような柔らかさが好きな人や、体重が軽く硬めの寝具で体が浮いてしまうと感じる人には、合わない可能性があります。
次に、重量8.5kgという数字です。
お米の5kg袋より重いと考えると、毎朝たたんで押し入れへ持ち上げるのは楽な作業ではありません。
一人暮らしで敷きっぱなしにするのか、毎日たたむのか、自分の使い方を先に決めておくことをおすすめします。
折りたたんだ状態でも約67×98×39cmあるので、押し入れの一段を丸ごと使う覚悟が必要です。
床に直接敷く場合の湿気にも注意が要ります。
裏面のメッシュは熱を逃がすための設計ですが、床とのあいだに湿気がたまる環境まで解決するとは書かれていません。
特に冬場の結露しやすい部屋では、ときどき立てかけて風を通す習慣が欠かせません。
細かい点ですが、商品の寸法は「長さ195cm」、使用時サイズは「約198cm」と、二つの表記が並んでいます。
手持ちのベッドフレームやシーツに合わせる予定なら、購入前に販売元へ確認しておくと安心です。
また、洗えると明記されているのはカバーで、中材の手入れ方法や保証期間は今回の商品情報には記載がありませんでした。
長く使う寝具だからこそ、購入ページで改めて確かめておきたい部分です。


他メーカーの商品との比較
比較した三つ折りマットレス
GRANDと比べたのは、同じく床置きもできる三つ折りタイプの3商品です。
マニフレックス「メッシュ・ウィング」、エアウィーヴ「スマートZ01」、ニトリ「3つ折り高反発マットレス厚さ10cm(日本製)」を選びました。
厚みと硬さ:GRANDが一歩リード
マニフレックスのメッシュ・ウィングは、シングルで198×97×11cm、硬さ170N、芯材はエリオセルと紹介されています。
GRANDは12cmと1cm厚く、上層は220Nと硬め寄りです。
床での底つき感の少なさと、しっかりした支えを求めるならGRANDが有利です。
逆に、硬すぎない寝心地を好む人にはメッシュ・ウィングのほうがなじみやすいはずです。
エアウィーヴのスマートZ01は、比較情報サイトで厚さ約9cm、重量9.2kg、中材はポリエチレン製のファイバーと紹介されています。
厚みではGRANDが3cmほど上回り、重さもわずかにGRANDのほうが軽量です。
清潔さ:エアウィーヴが明確に上
ここはGRANDが負けを認めるべき部分です。
スマートZ01は頭・腰・脚の3分割構造で中材を入れ替えられ、カバーも水洗いできるとされ、発売時から中材とカバーの両方が洗える点を特長にしています。
GRANDで洗えると明記されているのはカバーのみです。
ペットや小さな子どもがいて、中まで丸ごと洗いたい家庭なら、エアウィーヴに軍配が上がります。
保証と価格:安心感と手軽さは他社に分がある
マニフレックスは比較サイトの表記で保証10年とされており、長期保証の安心感は大きな強みです。
GRANDは今回の商品情報に保証期間の記載がなく、この点は比較のしようがありません。
ニトリの日本製3つ折り高反発マットレスは、公式通販でサイズ違いを含め8,490〜14,900円の価格帯で、レビュー評価は平均4.4点と表示されていました。
価格は時期によって変わりますが、「とにかく手頃に、近くの店舗で試してから買いたい」人にはニトリが現実的な選択肢です。
比較から見えたGRANDの立ち位置
GRANDは、厚み、部位ごとの作り込み、ベッドと床の両立という三点で、価格重視のニトリと、清潔さ重視のエアウィーヴのあいだに立つ商品です。
「床でも12cmの厚みが欲しい」「横向き寝で肩の沈み込みを大事にしたい」人には、はっきりした選ぶ理由があります。
一方で、中材の丸洗いや長期保証を最優先するなら、他社を選ぶほうが満足度は高くなります。
まとめ
床で眠る夜は、ある日とつぜんやってきます。
来客の夜かもしれませんし、望まない形でやってくる夜かもしれません。
EMOORは、そんな夜の体の痛みと19年向き合ってきた会社でした。
論文を書き、ショールームを無料で開き、この夏には被災地の避難所へ寝具を届けています。
「EMOORマットレスシングルGRAND」は、その積み重ねを厚さ12cmに詰め込んだ一枚です。
硬めの寝心地と8.5kgの重さは、人によってははっきり弱点になります。
それでも、ベッドと床のどちらでも妥協したくない人にとっては、頼れる相棒になり得ます。
まずは今夜、いつもの寝具に仰向けで寝て、腰の下に手のひらがすっと入るかどうか試してみてください。
その小さな違和感が、寝具を見直すいちばん確かな合図になります。




