この工具はパワーより先に「重さ」で選ぶべきです
はじめに
台風が過ぎた翌朝、庭に転がる折れた枝を前にため息をついた経験はないでしょうか。
手のこで一本ずつ切り始めて、五本目あたりで腕がじんわり重くなる。
あの感覚は、やった人にしか分からない小さな絶望です。
日本ののこぎりは「引いて切る」道具として独自に発達し、職人の腕と根気に支えられてきました。
ただ、腕力にも根気にも限りがあります。
そこで候補に挙がるのが、刃を電気の力で前後に動かす「セーバーソー」です。
とはいえ、大型のセーバーソーは重く、物置の奥で眠りがちになります。
年に数回しか使わない道具に、何キロもの重さは必要でしょうか。
この記事で取り上げるのは、HiKOKI(ハイコーキ)の「HiKOKIコードレスワンハンドセーバーソーCR12DA(ES)」です。
片手で扱える軽さと、手のこ感覚で使える気軽さを打ち出した10.8Vモデルです。
前半ではHiKOKIという会社の成り立ちを、後半では商品の実力と他メーカー品との違いを、忖度なしで整理します。
粗大ごみの分解や枝打ちに悩んでいる方は、読み終えたときに「自分に必要な一台」がはっきりするはずです。


HiKOKIとは
企業詳細
HiKOKIは、工機ホールディングス株式会社が展開する電動工具ブランドです。
同社は1948年に設立された電動工具メーカーで、旧社名は日立工機株式会社です。
つまり、ブランド名こそ新しいものの、中身は70年以上の歴史を持つ老舗です。
創業から「日立の電動工具」へ
同社自身が公開している年表によると、日立工機は石炭採掘用の機械・設備と電動工具のメーカーとしてスタートしました。
その後、電動工具の累計生産台数を積み上げ、コードレスドリルの投入へと進みます。
年表では、マイクロプロセッサー制御を搭載したインパクトドリル「DV20VA」を、世界初の電動工具として出荷したことも紹介されています。
「HITACHI」のロゴが入った緑色の工具を、ホームセンターや建設現場で見かけた方も多いと思います。
日立グループからの独立
転機は2017年に訪れます。
日立製作所の子会社だった日立工機は、2017年3月に米国の投資会社KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)傘下のHKホールディングスの傘下に入り、2018年6月に社名を工機ホールディングスへ変更しました。
当時の報道では、KKRは株式公開買付けで全株式を取得し、同社は東京証券取引所の上場を廃止する見通しとされていました。
新社名には、旧社名との連続性を保ちつつ、複数ブランドを抱える現状と、M&Aで事業を広げる将来像を込めたと説明されています。
「HiKOKI」という名前に込められた意味
製品ブランドは2018年10月1日から「HiKOKI」へ切り替わり、生産面では同年6月から新ブランド製品の生産に移行する計画でした。
海外向けの発表では、発音しやすさのために最初の音節を小文字の「i」にし、さらに「No.1」を目指す意思として数字の「1」を暗に込めたと説明されています。
単なる改名ではなく、「日立」の看板を外しても選ばれる会社になるという宣言だったと読み取れます。
社名変更の発表時には、2020年度に売上3,000億円を目指す目標も掲げられていました。
ただし、この目標を達成できたかどうかは、今回のリサーチでは公表資料から確認できませんでした。
複数ブランドを束ねるグループ構造
工機ホールディングスはHiKOKIだけの会社ではありません。
ブランド変更の際にも、グループが持つ「metabo」「SANKYO」「CARAT」「HIT-MIN」「himac」の名称は変えないと案内されていました。
特にドイツの電動工具ブランド「metabo(メタボ)」がグループにいる点は重要です。
北米市場では、HiKOKIの工具は「MetaboHPT」という名前で販売されています。
国によって看板が違うため、海外のレビューを調べるときは名前の違いに注意が必要です。
世界規模の事業基盤
欧州向け公式サイトでは、製品ラインアップは約1,300機種、生産拠点8か所、販売会社38社、輸入代理店110社以上、従業員6,800人以上とされています。
求人情報では、海外売上が7割以上、海外連結子会社が60社以上とされ、茨城県の勝田工場も勤務地に挙げられています。
「日本の会社」というより、日本に根を持つ世界企業と捉えたほうが実態に近いと言えます。
本社所在地は東京都港区港南2丁目です。
日本市場への再投資
国内では、日本事業統括本部と販売会社を統合し、2021年4月に日本事業を担う工機ホールディングスジャパン株式会社を設立しています。
国内の販売チャネルはホームセンター、eコマース、個人経営の工具店や金物店、卸商、販売代理店の5つで、特にホームセンターとeコマースを成長領域として強化しているとのことです。
今回のCR12DA(ES)がAmazonで「ケース無し仕様」として売られている背景にも、こうしたネット販売重視の流れがあると考えられます。
コードレス戦略とマルチボルト
2018年の新ブランド発表会では「コードレス革命」を掲げ、コードレス工具を軸に成長を加速させる方針が示されました。
その象徴が36Vの「マルチボルト」電池です。
マルチボルト電池は18V製品とも互換性があり、工具に装着するだけで自動的に電圧が切り替わる仕組みです。
一方、今回のCR12DA(ES)は10.8Vの別系統で、マルチボルトとは電池を共用できません。
この点は商品紹介の章で改めて触れます。
リサーチで分からなかったこと
上場廃止後は、決算情報を一般向けに詳しく開示する義務がなくなっています。
そのため、直近の売上高や利益、現在の株主構成の細部は、今回のリサーチでは確認しきれませんでした。
外部のデータベースには売上の数値も載っていましたが、単位表記が不自然だったため本記事では採用していません。
★当ブログのオリジナル企業信頼度評価(5つ星評価)
運営体制の明確さ ★★★★★ (5.0)
社名変更の経緯、本社所在地、国内事業会社の設立時期まで公式発表で追えます。
誰が作り、誰が売っているのかが明確な点は大きな安心材料です。
市場での評価実績 ★★★★★ (5.0)
日立工機時代から70年以上、プロの現場とDIYの両方で使われてきました。
ブランド名が変わっても、製品の系譜が途切れていない点を高く評価します。
商品開発の専門性 ★★★★☆ (4.5)
世界初をうたうマイコン制御工具の実績や、18Vと36Vを自動で切り替える電池技術は独自性が高いです。
ただし、10.8V系とマルチボルト系の電池が共用できず、規格が分かれている点は少し減点しました。
社会的・文化的な取り組み ★★★☆ (3.5)
世界各地に販売網を持ち、職人の道具づくりを支えてきた歴史には一定の重みがあります。
一方で、一般消費者向けに分かりやすく発信された社会貢献の情報は、今回のリサーチでは多く確認できませんでした。
財務情報の開示度 ★★★ (3.0)
上場廃止以降、詳細な業績を一般の購入者が確認するのは難しくなっています。
投資ファンド傘下の企業として標準的な水準ですが、透明性の面では上場時代に及びません。
総合評価 ★★★★☆ (4.2)
経営体制は変わっても、工具メーカーとしての実績と事業基盤は十分に信頼できる水準です。
財務の見えにくさを差し引いても、安心して選べるブランドと判断します。
商品紹介「HiKOKIコードレスワンハンドセーバーソーCR12DA(ES)」



商品詳細
- 色:アグレッシブグリーン
- ブレードの材質:金属
- 推奨使用場所:アルミニウム、ウッド、プラスチック、メタル、鉄
- 電源:バッテリー式
- 特徴:充電式
- 付属コンポーネント:無し
- 電圧:10.8ボルト
- 商品の重量:2.3キログラム
- 歯数:2
- 仕様の特長:お求めやすいケース無し仕様
- 使い方:手のこ感覚でささっと使える
- 用途:DIY、枝打ち、解体作業、粗大ごみの分解
- ブレード交換:スパナやドライバー不要、回して差すだけの簡単ブレード交換
- ジグソーブレード対応:アタッチメント無しで取り付け可能(クロス取り付け形状タイプのみ)
- 切断能力:軟鋼パイプ外径50mm、木材厚さ50mm、軟鋼板厚さ12mm
- 標準付属品:10.8V1.5Ahリチウムイオン電池BSL1215×1個、急速充電器、セーバーソーブレード金属用全長150mm・木材用全長120mm各1枚、電池カバー
- 能力/パイプ:軟鋼パイプ外径50mm、塩ビパイプ外径50mm
- 能力/木材:厚さ50mm
- 能力/軟鋼材:厚さ12mm
- モーター:直流モーター
- 無負荷ストローク:0〜3200min⁻¹(回/分)
- ストローク:13mm
- 工具本体寸法:全長335mm×全高158mm×全幅74mm(BSL1240M装着時)
- 質量:1.5kg(BSL1240M装着時)
- 使用可能蓄電池:スライド式リチウムイオン電池BSL12xxシリーズ
- LEDライト:白色LED
良い口コミ
「台風で折れた庭木の枝を、片手でサクサク処理できました。手のこで汗だくになっていた去年がうそのようです」
「電池と充電器がセットなので、届いたその日に使えました。ケースがない分、価格が抑えられているのも助かります」
「刃の交換に工具がいらないのが本当に楽です。木材用から金属用への付け替えが、慣れれば数秒で終わります」
「古い物干し竿や塩ビパイプを短く切って、粗大ごみに出さずに済みました。処分の手間が一気に減りました」
「白色LEDのおかげで、物置の暗い場所でも切る位置が見やすいです。細かい気配りがうれしいです」
気になる口コミ
「太い丸太は時間がかかります。厚さ50mmまでと書いてある通り、限界を超える作業には向きません」
「付属の電池が1.5Ahなので、まとめて切るとすぐ残量が減ります。大量の作業なら予備電池がほしくなります」
「ケースがないので、刃や充電器の保管場所に困りました。別に箱を用意する必要があります」
「手持ちのHiKOKIの18V電池が使えませんでした。同じメーカーでも電圧が違うと共用できない点は買う前に知りたかったです」
「商品ページの重量表記が2.3kgと1.5kgの2つあって、どちらが正しいのか分かりにくかったです」
「HiKOKIコードレスワンハンドセーバーソーCR12DA(ES)」のポジティブな特色
一番の魅力は、「出しっぱなしにしなくても、すぐ使える」気軽さです。
質量は1.5kg(BSL1240M装着時)で、2リットルのペットボトルより軽い計算になります。
このくらいの重さなら、脚立の上で枝を切るときも、片手で枝を押さえながら作業できます。
大型のセーバーソーでは、構えるだけで腕が疲れる場面が少なくありません。
「手のこ感覚」という言葉は、誇張ではなく重さから来ている表現です。
二つ目は、切れる素材の幅広さです。
木材だけでなく、軟鋼パイプ、塩ビパイプ、軟鋼板まで対応しています。
金属用150mmと木材用120mmの刃が最初から付いているので、買ったその日に両方試せます。
家の中で出る「捨てにくいもの」の多くは、木と金属と樹脂の組み合わせです。
壊れた棚、古い物干し竿、使わなくなった木製ラックなどを小さく分解できれば、粗大ごみの申し込み自体を減らせる可能性があります。
三つ目は、刃の交換に工具が要らない点です。
スパナやドライバーを探す時間は、作業の中で意外と大きなストレスになります。
回して差すだけで交換できるので、素材が変わるたびに刃を替える習慣が自然と身につきます。
適した刃を使うことは、仕上がりのきれいさと安全性の両方につながります。
さらに、クロス取り付け形状タイプに限り、ジグソー用の刃もアタッチメントなしで付けられます。
ホームセンターで手に入る刃の選択肢が広がるのは、長く使ううえで心強い要素です。
四つ目は、速度を自分で調整できることです。
無負荷ストロークは0〜3200回/分で、引き金の握り加減でスピードを変えられる仕様です。
金属を切り始めるときはゆっくり、木材は速く、といった使い分けができます。
いきなり全開で刃が跳ねる心配を減らせるので、電動工具に慣れていない方にも扱いやすい設計です。
最後に、電池・急速充電器・刃2枚・電池カバーが一式そろっている点も見逃せません。
ケースを省いた分、必要なものだけを詰めた構成になっています。
初めてHiKOKIの10.8V製品を買う方にとって、余計な出費を抑えて始められる入口と言えます。
「HiKOKIコードレスワンハンドセーバーソーCR12DA(ES)」のネガティブな特色
まず、パワーには明確な上限があります。
木材は厚さ50mm、パイプは外径50mm、軟鋼板は厚さ12mmまでが切断能力です。
太い庭木の幹や、建物の解体のような本格的な作業には力不足です。
「何でも切れる万能のこぎり」と期待すると、がっかりする可能性があります。
次に、付属電池の容量が小さめな点です。
標準付属は1.5Ahの電池が1個で、質量や寸法の表記はより大容量のBSL1240M装着時の数値になっています。
つまり、カタログ上の数値と、届いた状態の使用感は完全には一致しません。
まとめて作業したい方は、予備電池や大容量電池の購入を視野に入れておく必要があります。
三つ目は、電池の規格です。
使える電池はスライド式のBSL12xxシリーズに限られます。
HiKOKIの18Vやマルチボルトの電池を持っていても、この工具には使えません。
「同じメーカーだから」と思い込んで買うと、電池が無駄になる恐れがあります。
四つ目は、ケースがないことです。
価格を抑えるための仕様ですが、刃や充電器をまとめてしまう場所は自分で用意する必要があります。
むき出しの刃を工具箱に放り込むのは、ケガの原因にもなります。
最後に、商品ページの表記に分かりにくい部分があります。
「商品の重量2.3キログラム」と「質量1.5kg」が併記されており、何を含めた重さなのかは明記されていません。
「付属コンポーネント:無し」という表記と、電池や充電器が付く標準付属品の内容も一見すると食い違って見えます。
「歯数:2」という項目も、何を指すのか提供情報だけでは判断できません。
購入前に、販売ページで付属品の内容をもう一度確認しておくと安心です。


他メーカーの商品との比較
比較の前提
比較対象は、同じ10.8Vクラスのマキタ「JR104D」と、同じHiKOKIの18Vモデル「CR18DA」です。
数値はそれぞれ販売店などに掲載された仕様をもとにしています。
重さの測定条件はメーカーごとに異なる場合があるため、目安として読んでください。
マキタJR104Dとの比較
JR104Dは10.8V、ストローク13mm、ストローク数0〜3,300回/分、重量1.3kgと掲載されています。
切断能力はパイプ50mm、木材50mm(152mmブレード使用時)で、ジグソーブレードにも対応し、LEDライトも付いています。
ストローク長と切断能力の数値はCR12DA(ES)とほぼ同等です。
ストローク数と重量の表記では、JR104Dがわずかに上回ります。
さらにJR104Dにはマルチポジションスイッチがあり、握る位置を変えて切断姿勢を選べる点が特徴とされています。
正直に言えば、カタログ上の数値ではJR104Dが一歩リードしています。
CR12DA(ES)が勝る点は、電池・充電器・刃2枚がセットになったAmazon向け構成で、すぐ使い始められることです。
一方、掲載されていたJR104Dの本体のみ品は、付属品がブレードと六角棒スパナにとどまります。
結局は、どちらのメーカーの10.8V電池をすでに持っているかで選ぶのが合理的です。
HiKOKICR18DAとの比較
CR18DAは18Vで、ストローク数0〜3200回/分、ストローク13mm、切断能力はパイプ50mm・木材50mm・軟鋼材12mm、質量1900g(蓄電池装着時)と掲載されています。
切断能力の数値はCR12DA(ES)と同じです。
違いが出るのは1回の充電で進められる作業量です。
CR12DAは4.0Ah電池で2×4材約60カットが目安とされています。
CR18DAは5.0Ahのマルチボルト電池で2×4材約120カットが目安です。
電池の条件が異なるため単純比較はできませんが、まとめて大量に切るならCR18DAに分があります。
その代わり、重さは約400g増えます。
比較から見えるCR12DA(ES)の立ち位置
性能だけで突出した製品ではありません。
軽さ、電池付きの手軽さ、10.8V電池を持つHiKOKIユーザーとの相性が、この機種を選ぶ理由になります。
すでに18V電池を持っている方は、CR18DAを検討したほうが無駄がありません。
まとめ
冒頭で「この工具は重さで選ぶべき」と書いたのは、使う頻度を左右するのが重さだからです。
年に数回の枝打ちや粗大ごみの分解なら、パワーの差より「取り出すのがおっくうにならないか」が効いてきます。
HiKOKIコードレスワンハンドセーバーソーCR12DA(ES)は、その一点に誠実な一台です。
太い木を切る力はありません。
それでも、物置から片手でひょいと持ち出せる道具は、結果的に一番働いてくれます。
今日できる小さな一歩として、切りたいものの太さを定規で測ってみてください。
50mm以内なら、この一台はきっと頼もしい相棒になります。




