はじめに
「なんだか自分の声、こもって聞こえる……」
オンライン会議やゲーム実況の録画を見返したとき、画面の向こうの自分の声にガッカリした経験はありませんか。まるで分厚いマスク越しに喋っているような、あるいは古いラジオから流れてくるような不明瞭な音声。これでは、せっかくの熱のこもったトークも、相手の心に届く前に色褪せてしまいます。
声は、オンライン上における「あなたの服装」そのものです。ヨレヨレのシャツを着て商談に行かないのと同じように、ノイズ混じりの音声で配信を行うのは、とてももったいないこと。しかし、プロが使うような数十万円もする機材を揃えるのは、さすがにハードルが高いと感じる方も多いでしょう。
そこで今、世界中のクリエイターたちの間で密かに、しかし確実に支持を広げているのが「MAONO(マオノ)」というブランドです。特に今回ご紹介する『PD100X Black』は、洗練されたデザインと実用的な機能を兼ね備えながら、驚くほど手に取りやすい価格を実現しています。今回は、この謎多きブランドの正体と、話題のマイクの実力を徹底的に解剖します。


MAONOとはどこの国のブランドか
企業詳細
MAONO(マオノ)は、正式名称を「Shenzhen Maono Technology Co., Ltd.(深圳市闪克科技有限公司)」といいます。「世界の工場」として知られ、数々のハイテク企業がひしめく中国・広東省の深セン市に本社を構えるオーディオ機器メーカーです。
ブランド名の「MAONO」は、スワヒリ語で「ビジョン(Vision)」を意味します。この社名には、「インターネットオーディオ製品の世界的リーディングブランドになる」という創業者の強い意志が込められています。
2014年に設立された同社は、創業者であるAlex Lu氏がBYD(中国の大手EV・バッテリーメーカー)での勤務経験を経て立ち上げました。当初は海外向けのOEM(他社ブランドの製品製造)を行っていましたが、アフリカでの駐在経験や国際的なビジネス感覚を持つLu氏は、「これからはインターネット配信の時代が来る」と予見。既存のスタジオ向け高級マイクではなく、YouTuberやゲーマー、ポッドキャスターといった「次世代のクリエイター」に向けた、安価で高性能なマイクの開発に舵を切りました。
現在では世界153カ国以上に展開し、ユーザー数は数百万人に達しています。特筆すべきは、多くの新興ブランドが製造を外部委託する中で、MAONOは2018年に自社工場を設立している点です。これにより、開発から製造、販売までを一貫して管理し、品質の安定化とコストダウンを実現しています。
★当ブログのオリジナル企業信頼度評価(5つ星評価)
- 情報の透明性:★★★★☆ 4.0
(公式サイトでの情報開示が積極的で、創業者の経歴や工場の様子も公開されている点は高評価。) - ユーザーサポート:★★★☆☆ 3.5
(専用ソフトウェアの更新頻度やSNSでの対応は早いが、日本語サポートの完璧さにはまだ伸び代がある。) - 製品の品質・一貫性:★★★★☆ 4.0
(自社工場を持っている強みがあり、初期不良の報告も同価格帯の他社製品に比べて少ない傾向。) - 革新性・開発力:★★★★☆ 4.2
(市場のトレンド(RGB、USB/XLR両対応など)を素早く製品に取り入れるスピード感は非常に優秀。)
- 総合評価:★★★★☆ 3.9
商品紹介:ゲーミングマイク『PD100X Black』



商品スペック
- マイク波形率:USBマイク、XLRマイク、PCマイク
- 商品寸法 (長さx幅x高さ):6.5 x 5.7 x 16 cm
- 電源:電源コード式
- 材質:アクリロニトリルブタジエンスチレン, プラスチック, 金属
- S/N比:99 dB
- ハードウェアプラットフォーム:ゲーム機, デスクトップパソコン, ノートパソコン
- 周波数応答:40 Hz
- 電池使用:いいえ
- その他 機能:USB/XLR接続,カーディオイド単一指向性,ダイナミック式,3.5mmヘッドホン出力端子,カラフルなRGBライティング, ノイズリダクション, ボリュームコントロール, ミュート機能, 専用ソフトウェアMaono Link
- 素材:アクリロニトリルブタジエンスチレン, プラスチック, 金属
- 製品サイズ:6.5 x 5.7 x 16 cm; 680 g
良い口コミ
- 「USBで手軽に繋げるのに、XLR端子もついてるから将来オーディオインターフェースを買っても使い続けられるのが最高に便利。」
- 「専用ソフトのMaono Linkを使えば、イコライザー設定を細かく保存できるので、自分の声に自信が持てるようになった。」
- 「ゲーミングマイク特有の派手なRGBライトが、デスクの雰囲気を一気におしゃれにしてくれるのでテンションが上がる。」
- 「ダイナミックマイクだから、エアコンの音やキーボードの打鍵音をあまり拾わず、声だけをクリアに届けてくれる。」
- 「本体にあるボタン一つでミュートできる機能が、急な来客や咳き込みたい時に本当に助かる。」
気になる口コミ
- 「本体がプラスチック製なので、高級な金属製マイクと比べると少しチープな手触りに感じてしまうことがある。」
- 「付属のスタンドが少し低めなので、口元にマイクを持ってくるには別途マイクアームを用意する必要があった。」
- 「RGBライティングのパターンがもう少し細かくカスタマイズできれば、他のデバイスと色を合わせやすいのにと惜しく思う。」
- 「ミュートボタンがタッチ式ではなく物理ボタンに近い感触なので、操作した時に『ボフッ』というタッチノイズが乗ることがある。」
- 「専用ソフトがたまに認識しないことがあり、PCを再起動しないといけない場面が何度かあった。」
「PD100X Black」のポジティブな特色
このマイクの最大の魅力は、「成長するクリエイターに寄り添う拡張性の高さ」にあります。
多くの配信者が最初に直面する「USBマイクの手軽さを取るか、XLRマイクの音質への発展性を取るか」というジレンマを、この一台は見事に解決しています。初心者のうちは付属のUSBケーブルでPCやゲーム機に直挿しして使い、配信活動が軌道に乗ってオーディオインターフェースを導入した際には、背面のXLR端子を使ってプロ機材として運用することが可能です。まさに「一台で二度おいしい」仕様と言えます。
また、「環境ノイズへの圧倒的な強さ」も見逃せません。一般的なコンデンサーマイクは感度が高すぎて、部屋の反響音や遠くの救急車のサイレンまで拾ってしまいがちです。しかし、PD100Xは「ダイナミック式」かつ「カーディオイド単一指向性」を採用しているため、マイク正面の声だけをピンポイントで捉えます。防音設備のない一般的な自室で配信するゲーマーにとって、これほど心強い味方はいないでしょう。
さらに、専用ソフトウェア「Maono Link」によるデジタル制御も優秀です。マイク本体のハードウェア的な制約を、ソフトウェア側のノイズリダクションやトーン調整で補完することで、価格以上のクリアな音質を実現しています。
「PD100X Black」のネガティブな特色
一方で、コストダウンの影響が色濃く出ているのが「筐体の素材感」です。
スペック表にもある通り、主要な材質には「アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS樹脂)」や「プラスチック」が多用されています。金属筐体のマイクが持つずっしりとした重厚感や冷やりとした高級感を求めると、少し期待外れに感じるかもしれません。軽量であることはアームへの負担が少ないというメリットでもありますが、所有欲を満たすという点では好みが分かれるポイントです。
また、機能面での惜しい点が「物理操作系統の感触」です。ボリュームコントロールやミュート機能が本体に搭載されているのは非常に便利ですが、プラスチック筐体であるがゆえに、操作時の振動がマイク内部に伝わりやすい傾向があります。特に緊迫したゲーム中のミュート操作などは、視聴者にノイズとして伝わらないよう、少し丁寧に扱う必要があります。


他メーカーのゲーミングマイクとの比較
ここでは、PD100X Blackの購入を迷っている方が必ず比較対象にするであろうライバル機種と、あえて格上のマイクを引き合いに出し、その立ち位置を明確にします。
vs FIFINE 「AmpliGame AM8」
PD100X Blackにとって、現在市場で最も強力なライバルとなるのが、同じく中国ブランドであるFIFINE(ファイファイン)の『AmpliGame AM8』です。
共通点:
両者ともに「USB/XLR両対応」「ダイナミック型」「RGBライティング搭載」「ゲーマー向け」というコンセプトは完全に一致しています。価格帯も非常に近く、多くのユーザーがこの二択で悩みます。
PD100X Blackが優れている点:
決定的な違いは「専用ソフトウェア(Maono Link)」の存在です。PD100Xはソフトウェア経由でリミッターやコンプレッサー、EQ(イコライザー)の設定を細かく調整し、それをPC側で処理させることができます。自分の声質に合わせて「太い声」「明るい声」を作り込みたい場合、MAONOの方に分があります。
また、デザイン面ではPD100Xの方が伝統的な放送用マイクに近い形状をしており、画面に映り込んだ際の「プロっぽさ」を演出するのに適しています。
FIFINE AM8が優れている点:
AM8は、端子類が底面ではなく「背面」に配置されているため、デスクトップに置いた際のケーブルの取り回しがしやすいという物理的なメリットがあります。また、AM8のRGBライティングは底部が光る独特のデザインで、よりゲーミングデバイスらしい派手さを好む層には支持されています。
vs Audio-Technica 「AT2020USB-X」
次に、日本の老舗オーディオメーカー、オーディオテクニカの名機『AT2020USB-X』と比較してみましょう。価格はPD100Xの2倍以上しますが、品質のベンチマークとして重要です。
決定的な違い:マイクの形式
AT2020USB-Xは「コンデンサー型」、PD100Xは「ダイナミック型」です。
コンデンサー型であるAT2020USB-Xは、空気の揺らぎまで捉えるような繊細で高精細な音が録れます。静かなスタジオや防音室で録音するなら、間違いなくこちらが上です。
しかし、生活音が入りやすい自宅環境(エアコンの音、PCファンの音、家族の声など)では、その高感度があだとなることがあります。対してPD100X(ダイナミック型)は、感度が低い代わりに「目の前の音」以外を拾いにくいため、「防音されていない普通の部屋」で使う分には、むしろPD100Xの方がノイズの少ない聞きやすい音が録れるケースが多々あります。
結論:PD100X Blackを選ぶべき人
これらを比較した結果、PD100X Blackは以下のような立ち位置になります。
- FIFINE AM8との比較: 「ソフトを使って音質を細かく調整したい」「見た目は落ち着いたプロ機材風がいい」ならPD100X。
- 高級コンデンサーマイクとの比較: 「防音室はない」「キーボードを激しく叩く」「環境音を消したい」なら、高いマイクよりもPD100Xの方が実用的。
単に「安いから」選ぶのではなく、「自宅環境に最適化されたダイナミックマイクだから」選ぶ。それがPD100X Blackの賢い選び方と言えるでしょう。
まとめ
今回は、急成長中のオーディオブランドMAONOと、その主力製品であるPD100X Blackについて詳しく解説しました。
MAONOというブランドは、単なる「安価な製品を作るメーカー」ではなく、現代のクリエイターが抱える「環境音」や「機材の拡張性」というリアルな悩みに、技術とビジョンを持って向き合っている企業だということがお分かりいただけたと思います。
PD100X Blackは、決して高級素材を使ったラグジュアリーなマイクではありません。しかし、「USBでもXLRでも使える」「雑音を拾いにくい」「ソフトで音が作れる」という、配信者が喉から手が出るほど欲しい機能を、驚くべき価格で実現した一台です。これから配信を始める方、あるいは今のマイクのノイズに悩んでいる方にとって、このマイクは「声」という個性を輝かせるための、最高の相棒となってくれるはずです。
あなたのデスクに新たな「ビジョン」が加わり、リスナーとの距離がより縮まることを願っています。




