はじめに
イヤホンで音楽を聴いていて、玄関のインターホンに気づかなかった経験はありませんか。
宅配便の不在票を手に、少し悔しい気持ちになる。
あの小さな「あーあ」は、多くの人に覚えがあるはずです。
耳をふさがないオープンイヤー型イヤホンは、そんな悩みを解決する道具として一気に広がりました。
ただ、正直に言えば「開放感はあるけれど、音がスカスカ」という声もついて回ってきました。
窓を開けたままの部屋でスピーカーを鳴らすと、低音がどこかへ逃げていく感覚に近いものがあります。
そこに一石を投じたのが、2026年に創業30周年を迎えた音響ブランドEdifier(エディファイア)です。
2026年9月に登場した「Edifierイヤーカフ型ワイヤレスイヤホンComfoBassPro」は、名前に「Bass(低音)」を堂々と掲げています。
耳たぶに挟むアクセサリーのような見た目で、しっかりとした低音を鳴らせるのか。
期待と疑いが半分ずつ、というのが筆者の本音でした。
この記事では、Edifierという企業がどんな会社なのかを財務情報まで掘り下げたうえで、ComfoBassProの実力と弱点を、他社のイヤーカフ型イヤホンと比べながら率直にお伝えします。


Edifierとは
企業詳細
音楽好きの小さなグループから始まった会社
Edifierは1996年5月に北京で設立され、少人数の音楽好きが集まって生まれた会社だと紹介されています。
社名の正式表記は漫步者(マンブージャー)で、直訳すると「ゆっくり歩く人」という意味を持ちます。
上場企業としての正式名称は深セン市漫歩者科技股份有限公司で、決算報告書の会社責任者には創業者の張文東(ジャン・ウェンドン)氏の名前が記されています。
冒頭のキャッチコピーで触れた「木箱のスピーカー」は、ここにつながります。
最初に手がけた製品は木製のマルチメディアスピーカーで、当時主流だったプラスチック製のパソコン用スピーカーとは一線を画す存在だったとされています。
安っぽい音が当たり前だった時代に、「良い音をもっと多くの人に」と箱の素材からこだわった。
この姿勢が、30年後のComfoBassProにも受け継がれていると筆者は考えています。
上場企業としての顔
Edifierは株式を公開している企業です。
2010年2月5日に新規株式公開を行い、深セン証券取引所に証券コード002351で上場しています。
上場企業である以上、売上や利益を定期的に公表する義務があり、ここは小規模な越境ECブランドとの大きな違いです。
直近の業績を見てみます。
2024年の売上高は29.43億元で前年比9.27%増、純利益は4.49億元で同7.06%増でした。
一方で、2025年の売上高は27.97億元と前年比4.97%の減少に転じ、イヤホン事業の売上は15.03億元にとどまりました。
会社側はイヤホン部門の減収について、子会社のイヤホン製品ラインの穴埋めが追いついていないことを理由に挙げています。
ここは忖度なしに書いておきます。
イヤホン事業は、いまEdifierにとって「伸び悩んでいる部門」です。
その一方で、スピーカー事業は11.81億元で18.48%の増収、海外向け売上も8.21億元で29.94%の大幅増となり、全体に占める比率は29.34%まで上がりました。
2025年の粗利率は40.63%、純利益は4.31億元で、減益幅は売上の減少幅よりも小さく抑えられています。
つまり「稼ぐ力は保ちつつ、イヤホンで巻き返しを図っている最中」というのが実態に近いと言えます。
オープンイヤー型への本気度
ComfoBassProを理解するうえで外せないのが、Edifierが耳をふさがないイヤホンに大きく舵を切っている点です。
証券会社のリポートによると、同社は2024年からオープン型イヤホンを重点分野として投資しており、2025年4月の時点で耳掛け型・後頭部掛け型・イヤークリップ型の全形態をそろえ、発売済みモデルは十数機種に達していました。
減収に苦しむイヤホン部門で、成長市場に集中投資している。
ComfoBassProは、その戦略の最前線にある製品と見るのが自然です。
研究開発費も確認しておきます。
2025年上半期の研究開発費は約9,478万元で、前年同期の約8,783万元から増えています。
売上が伸び悩むなかで開発への投資を減らしていない点は、評価してよい材料です。
STAXという「名門」を傘下に持つ意味
Edifierの技術的な背景を語るうえで、STAX(スタックス)の存在は欠かせません。
STAXは1938年創業の老舗で、1960年に世界初の静電型ヘッドホン「SR-1」を生み出し、拠点は埼玉県富士見市にあります。
STAXは1995年に一度経営破綻し、1996年に新会社として再出発しました。
そして2011年12月、EdifierはSTAXの全株式取得を発表しています。
買収後も、STAXは全製品を国内で製造し続けているとされています。
名門を「ブランド名だけ使う」のではなく、ものづくりの現場ごと残している点は、オーディオ好きから信頼を得る大きな理由になっています。
さらに、2022年発売のヘッドホン「STAXSPIRITS3」では、STAXに加え、平面磁界型ドライバーで知られる米国のAudeze(オーデジー)もグループ企業として技術の基盤に挙げられています。
ゲーミング向けのHECATE(ヘカテー)や、高級オーディオ向けのAirpulse(エアパルス)といったサブブランドも展開しており、価格帯の幅広さは同業他社と比べても目立ちます。
国内での展開と評価
国内では、EDIFIERJapanが販売とサポートを担っています。
同社の本社は埼玉県富士見市にあり、STAXと同じ街に拠点を構えています。
広告面では、俳優の山崎賢人さんが2025年に続いて2026年もブランドアンバサダーを務めています。
2026年のCM発表会では、グループのCTO(最高技術責任者)である温煜(Stanley)氏が来日し、ブランド30周年の歩みと今後の成長戦略を説明しました。
製品の評価実績も確認できます。
2023年のVGP(ビジュアルグランプリ:国内の音響映像機器アワード)夏の部では6製品が受賞し、そのうち4製品が金賞を獲得しました。
2025年のVGPでも5つの賞を受け、世界70か国以上で商標を登録していることが案内されています。
気をつけておきたい点
良い話ばかりではありません。
Edifierの公式サイトには、ブランドを装った偽サイトへの注意喚起が掲載されています。
知名度が上がったブランドほど、偽物や偽サイトに狙われやすくなります。
購入するときは、公式サイトや公式ストアなど、販売元がはっきりした窓口を選ぶことをおすすめします。
また、従業員数については約3,000人と紹介されることが多いものの、確かな出典に基づく数字とは言い切れません。
本記事では参考値として扱います。
★当ブログのオリジナル企業信頼度評価(5つ星評価)
運営体制の明確さ ★★★★★(5.0)
創業年・創業者・上場市場・国内販売会社の所在地まで、公開情報で確認できます。
国内の窓口がはっきりしている点は、購入後のサポートを考えるうえで大きな安心材料です。
市場での評価実績 ★★★★☆(4.5)
30年にわたるスピーカー製造の実績に加え、VGPでの複数年にわたる受賞歴があります。
ただしイヤホン事業の売上は減少しており、この分野ではまだ巻き返しの途中と見ています。
商品開発の専門性 ★★★★☆(4.5)
STAXやAudezeといった専門性の高いグループ企業を持ち、研究開発費も増やし続けています。
オープンイヤー型で十数モデルを展開する開発量は、専業メーカーにも引けを取りません。
社会的・文化的な取り組み ★★★☆(3.5)
経営危機を経験したSTAXの国内生産を守り続けている点は、オーディオ文化への貢献として評価できます。
一方で、環境配慮などへの取り組みは公式の説明が抽象的で、具体的な成果までは確認できませんでした。
財務情報の開示度 ★★★★★(5.0)
上場企業として年次報告書や半期報告書を公開しており、売上や利益、研究開発費まで確認できます。
減収という不都合な数字も含めて公表されている点は、むしろ信頼につながります。
総合評価 ★★★★☆(4.5)
情報の透明性と技術的な背景は、イヤホンメーカーとしてトップクラスの水準です。
イヤホン部門の業績回復がこれからの課題ですが、企業としての信頼度は高いと判断します。
商品紹介「Edifierイヤーカフ型ワイヤレスイヤホンComfoBassPro」



商品詳細
- 色:スターライト
- ヘッドホン型式:完全ワイヤレス
- モデル名:ComfoBassPro
- 接続技術:ワイヤレス
- 装着方式:耳をふさがないイヤーカフ型
- ワイヤー素材:柔軟なニチノール形状記憶ワイヤー
- 対応規格:LDAC、ハイレゾ
- ドライバー:12mm大振幅ダイナミックドライバー
- 低音機能:自動低音補正
- 音響効果:DolbyAudio(アプリで切替可能)
- イコライザー:4種類のプリセットEQ、カスタムEQ
- アプリ:EDIFIERConneX(DolbyAudioが表示されない場合はV1.0.31以降へアップデート)
- 音漏れ対策:指向性音響設計
- マイク:AIアルゴリズムを活用した左右計4基
- Bluetooth:6.1
- 便利機能:2台同時接続、装着検出、自動再生・一時停止、左右自動識別
- 再生時間:イヤホン単体で最大12時間、充電ケース併用で最大48時間
- 急速充電:15分の充電で約4時間使用可能
- 防塵・防水性能:IP56相当
- 想定シーン:通勤・通学、仕事、家事、ウォーキングなどの長時間の「ながら聴き」
- 保証:購入日から1年間のメーカー保証
- サポート:不具合や質問はカスタマーサポート窓口で対応
良い口コミ
「耳の穴に何も入れないので、一日中つけていても耳が痛くなりません。在宅ワークのお供にちょうどいいです」
「イヤーカフ型は低音が弱いと思い込んでいましたが、思ったより音に厚みがあって驚きました」
「スマホとパソコンに同時につないでおけるので、オンライン会議の途中で電話がかかってきても慌てずに済みます」
「ケース込みで最大48時間なので、充電を忘れがちな自分でも週に一度の充電で回せそうです」
「耳から外すと音楽が止まり、つけ直すと再開する動きが自然で、家事の合間に使いやすいです」
気になる口コミ
「iPhoneで使っているので、LDACの高音質を体験できないのが少し残念です」
「電車の中や交差点では、周りの音に負けて音量を上げたくなります」
「静かなオフィスで音量を上げると、隣の席に聞こえていないか少し気になります」
「イヤーカフ型を初めて使ったので、正しい位置に装着できているのか最初は迷いました」
「DolbyAudioの切り替えがアプリに出てこず、アップデートが必要だと気づくまで時間がかかりました」
「Edifierイヤーカフ型ワイヤレスイヤホンComfoBassPro」のポジティブな特色
最大の魅力は、オープンイヤー型の弱点に正面から挑んでいる点です。
耳をふさがないイヤホンは、構造上どうしても低音が逃げやすくなります。
窓を開けた部屋でスピーカーを鳴らすと、重低音だけが外へ抜けていくのと同じ理屈です。
ComfoBassProは、12mm大振幅ダイナミックドライバーと自動低音補正でこの弱点を補います。
加えて、指向性音響設計によって音を耳元へ効率よく届けるため、周囲への音漏れを抑えながら低音の厚みを確保しています。
冒頭で書いた「耳をふさがないことは、音を諦めることではない」という言葉の答えが、ここにあります。
木箱のスピーカーで「安っぽい音」を拒んだ30年前の発想を、今度はイヤーカフという小さな器でやり直しているわけです。
音の調整幅が広いのも見逃せません。
DolbyAudio(ドルビーオーディオ:音に広がりを持たせる音響技術)に加え、4種類のプリセットEQとカスタムEQに対応しています。
朝の通勤ではボーカルを聴き取りやすく、夜のくつろぎ時間には低音を強めに。
一日の中で音の表情を変えられるのは、長時間つけっぱなしにするイヤホンだからこそ効いてくる機能です。
LDAC(エルダック:ワイヤレスで高音質の音楽を送る方式)とハイレゾに対応している点も、イヤーカフ型としては珍しい強みです。
対応するAndroidスマートフォンを使っている人なら、音の細やかさを一段上の水準で楽しめます。
日常の使い勝手も細部まで練られています。
Bluetooth6.1、2台同時接続、装着検出、自動再生・一時停止、左右自動識別に対応しており、左右を確かめずにさっと耳に挟むだけで使い始められます。
スマートフォンで音楽を聴きながら、パソコンの会議通知が来たら切り替える。
在宅ワークと家事を行き来する人には、この「切り替えの手間のなさ」が地味に効いてきます。
通話については、AIアルゴリズムを活用した左右計4基のマイクで声をクリアに届けます。
耳をふさがないため自分の声が自然に聞こえ、つい大声になってしまう現象が起きにくいのもオープンイヤー型の隠れた長所です。
バッテリーは、イヤホン単体で最大12時間、充電ケース併用で最大48時間です。
朝の家を出る前に充電を忘れても、15分の充電で約4時間使えるため、身支度の時間で通勤分をまかなえます。
IP56相当の防塵・防水性能があるので、急な雨やウォーキング中の汗にも過度に神経質にならずに済みます。
価格面でも魅力があります。
公式サイトでの販売価格は13,980円で、LDAC対応のイヤーカフ型としては手に取りやすい水準です。
「Edifierイヤーカフ型ワイヤレスイヤホンComfoBassPro」のネガティブな特色
まず、LDACの恩恵を受けられる人は限られます。
iPhoneはLDACに対応していないため、iPhoneユーザーにとってこの強みはほぼ意味を持ちません。
購入前に、自分のスマートフォンがLDACに対応しているかを必ず確認してください。
次に、オープンイヤー型そのものの限界があります。
自動低音補正や指向性音響設計があっても、耳を密閉するカナル型イヤホンと同じ低音や遮音性は期待できません。
電車の走行音や繁華街の雑踏の中では、音楽が周りの音に埋もれやすくなります。
音量を上げれば聴こえますが、そのぶん音漏れのリスクも増えます。
静かな図書館や満員電車での使用には向かないと考えておくのが無難です。
アプリ依存の部分にも注意が必要です。
DolbyAudioはアプリで切り替える仕様で、表示されない場合はEDIFIERConneXをV1.0.31以降へ更新する必要があります。
スマートフォンの操作が苦手な人にとっては、ひと手間かかるポイントです。
装着感には個人差があります。
ニチノール形状記憶ワイヤーで柔軟に耳へなじむ設計ですが、イヤーカフ型は耳の厚みや形によってフィット感が変わります。
初めてイヤーカフ型を使う人は、店頭で試せる機会があれば一度試しておくと安心です。
最後に、提供情報の範囲ではワイヤレス充電への対応は記載されていません。
置くだけ充電に慣れている人は、この点を事前に把握しておくべきです。
また、発売から日が浅く、長期使用での耐久性や不具合の傾向はまだ十分に見えていません。
保証は購入日から1年間なので、購入時のレシートや注文履歴は必ず保管しておきましょう。


他メーカーの商品との比較
比較対象は、国内で購入できる主要なイヤーカフ型として、Shokz(ショックス)、HUAWEI(ファーウェイ)、Anker(アンカー)の3製品を選びました。
Shokz「OpenDotsONE」との比較
OpenDotsONEの価格は27,880円で、ComfoBassProのほぼ2倍です。
DolbyAudioを搭載し、本体10時間・ケース込み40時間の再生、IP54相当の防水防塵、Bluetooth5.4に対応しています。
ワイヤレス充電に対応している点は、ComfoBassProにはない明確な強みです。
一方で、再生時間・防塵防水性能・Bluetoothの世代では、ComfoBassProが上回ります。
主要仕様にLDACの記載はなく、高音質の伝送方式を重視するならComfoBassProが有利です。
ブランドの実績と置くだけ充電を求めるならOpenDotsONE、性能あたりの価格を重視するならComfoBassProという住み分けになります。
HUAWEI「FreeClip2」との比較
FreeClip2の市場想定価格は27,280円前後です。
本体最長9時間・ケース併用で最長約38時間の再生、10.8mmのデュアル振動板ドライバー、Bluetooth6.0、IP57の防水性能を備えています。
防水性能ではFreeClip2が一段上です。
ただし対応コーデックはSBC、AAC、L2HC(ファーウェイ独自の高音質方式)で、LDACには対応していません。
L2HCの恩恵を受けられるのは基本的に同社製端末と組み合わせた場合のため、汎用性ではComfoBassProに分があります。
バッテリーと価格でも、ComfoBassProが優勢です。
Anker「SoundcoreAeroClip」との比較
最も直接のライバルになるのがAeroClipです。
片耳約5.9gで、IP55、Bluetooth5.4、SBC・AAC・LDAC対応、最大8時間・ケース込み32時間の再生、12mmダイナミックドライバーという構成で、通常価格は17,990円です。
LDAC対応と12mmドライバーという骨格はComfoBassProと共通しています。
そのうえで、再生時間、防塵防水性能、Bluetoothの世代、価格のすべてでComfoBassProが上回ります。
AeroClipは18か月保証に会員登録で6か月延長が付くため、保証の手厚さではAnkerが勝ります。
比較からわかる結論
スペックと価格のバランスでは、ComfoBassProが4製品の中で最も優れています。
ただし、ワイヤレス充電を求める人はShokz、防水性能を最優先する人はHUAWEI、長い保証を重視する人はAnkerを選ぶ理由があります。
「何を一番大事にするか」で答えが変わる、という点を忘れないでください。
まとめ
耳をふさがないイヤホンは、ずっと「快適さと引き換えに音を少し我慢するもの」でした。
ComfoBassProは、その思い込みをかなりの部分まで崩してくれる一台です。
30年前、プラスチックのスピーカーが当たり前だった時代に、Edifierは木の箱で音にこだわりました。
同じ頑固さが、耳たぶに挟む小さなイヤホンの中で鳴っています。
もちろん、iPhoneではLDACが使えないことや、騒がしい場所での聴こえ方には限界もあります。
それでも、インターホンの音を聞き逃さず、好きな曲の低音もちゃんと楽しみたい人には、心からすすめられます。
今日できる小さな一歩として、まずは自分のスマートフォンがLDACに対応しているかを設定画面で確かめてみてください。
その答え次第で、この一台の価値は大きく変わります。



