この5.2gが一日の「音の主役」を入れ替えます
はじめに
宅配便のインターホンが鳴っていたのに、イヤホンのせいで気づかなかった。
そんな経験はありませんか。
私はあります。
しかも再配達を頼んだその日に、もう一度やってしまいました。
2026年に入ってからも、耳をふさがない「イヤーカフ型」のイヤホンは各社から新モデルが続いています。
家電量販店でも専用の売り場を見かけるようになりました。
イヤリングのように耳のふちに挟むだけなので、音楽を流したままでも家族の声や駅のアナウンスがそのまま聞こえます。
ただ、手頃な価格の製品にはどうしても「低音が物足りない」「すぐズレる」という不安がつきまといます。
今回取り上げるのは、充電器メーカーとして世界に名前を広げたBaseus(ベースアス)の「BaseusイヤーカフイヤホンPM153」です。
重さはわずか5.2gで、充電ケースと合わせれば最大38時間の再生に対応しています。
この記事では、Baseusという企業の素顔を掘り下げたうえで、PM153の実力と弱点、他メーカー製品との違いを包み隠さずお伝えします。
読み終えるころには、冒頭の一行の意味が分かるはずです。


Baseusとは
企業詳細
2011年に広東省深圳市で生まれたブランド
Baseusは2011年に創業し、本拠地は広東省深圳市にあります。
深圳は世界有数の電子機器の製造拠点として知られる街です。
部品工場や基板メーカーが自転車で回れる距離に集まっているため、試作から量産までのスピードが圧倒的に速い。
Baseusの成長は、この土地の強みと切り離せません。
創業初期の主力は、充電ケーブルやスマートフォンケース、画面保護フィルム、車載ホルダーでした。
スマートフォンの普及とともに伸びてきた、いわば「スマホの周辺を固める」会社です。
社名の由来は「BaseonUser」
ブランド名は「BASEONUSER」(ユーザーを基点に)という考え方から生まれました。
技術を見せびらかすのではなく、使う人の困りごとから製品を考える。
その姿勢を名前そのものに込めています。
同社は「Practical.Reliable.BaseonUser.」(実用的に、信頼できるものを、ユーザーを基点に)を中核の価値として掲げています。
スローガンとしてはよくある言葉ですが、ケーブル1本から始まった会社が言うと、少し重みが違って聞こえます。
運営法人と経営陣
ブランドを運営する法人は深圳市倍思科技有限公司(英語表記ではShenzhenBaseusTechnology)です。
中国語の企業情報サイトでは、この法人の登記上の設立日は2019年3月11日、法定代表者は何世友氏と記載されています。
ブランドの創業は2011年ですが、現在の運営法人はその後に設立されたものと考えられます。
何世友(ハー・シーヨウ)氏は創業者兼最高経営責任者として、展示会やメディア取材の場にも自ら姿を見せています。
一方で、資料によっては別の法人名の傘下ブランドとして紹介されているケースもあります。
日本向けのプレスリリースでは、香港の法人であるBASEUSTECHNOLOGY(HK)CO.,LIMITEDが発行元になっていました。
グループ内で地域や時期ごとに窓口が分かれているようですが、その全体像は公開情報だけでは見通せません。
投資家が認めた成長性
2023年4月には、深創投と中金資本が主導する数億元規模のシリーズA(最初の本格的な資金調達ラウンド)を完了しました。
同年12月にはさらにA+ラウンドでも数億元を調達しています。
調達した資金の使い道としては、製品の研究開発、オフライン販路の構築、サプライチェーンや工場の整備、海外でのブランド発信が挙げられていました。
地元の有力ベンチャーキャピタルと大手証券系の投資部門が名を連ねている点は、事業の将来性が一定の評価を受けた証拠と言えます。
充電器で築いた技術の土台
Baseusの名前を世界に広めたのは、GaN(窒化ガリウム)という素材を使った急速充電器です。
従来より小さく、発熱を抑えながら大きな電力を送れるのが特徴で、ノートパソコンもスマートフォンも1台で充電できます。
同社は自社サイトでGaN充電器の先駆者であることを打ち出しています。
2023年時点で2,000件を超える特許と120件以上の国際デザイン賞を獲得したとされています。
2025年には、何世友氏が世界の利用者は3億人超、デザイン賞は約200件、特許は2,500件に達したと語りました。
ただし、これらはいずれも会社側が発表した数字です。
第三者による集計で裏付けられたものではない点は、頭の片隅に置いておく必要があります。
オーディオ事業への本格参入
充電器で築いた技術を足場に、Baseusは完全ワイヤレスイヤホンの分野にも乗り出しました。
2022年1〜3月期には主力のイヤホンが150万台を出荷し、世界市場のシェアで2%を超えたと発表しています。
日本のレビュー記事でも、完全ワイヤレスイヤホン市場で世界シェア2.5%超の実績を持つメーカーとして紹介されました。
エントリー機から始まり、ノイズキャンセリング搭載機、イヤーカフ型へとラインナップを広げてきた流れです。
ボーズとの協業で見せた本気度
2025年、Baseusは大きな一手を打ちます。
ベルリンで開催された家電見本市IFAで、米国の音響メーカーであるボーズと協業した上位ライン「Inspire」(インスパイア)を発表し、イヤホンのXP1、イヤーカフ型のXC1、ヘッドホンのXH1をそろえました。
なかでもXC1は、イヤーカフ型として世界初のハイブリッド型ドライバー(ダイナミック型とBA型の組み合わせ)を搭載したと紹介されています。
「安いアクセサリーメーカー」という見られ方から抜け出そうとする意志が、はっきり伝わってくる動きです。
日本市場での展開
日本では長くAmazonを中心に販売してきました。
2024年にはAmazonジャパンでの上半期の販売が好調だったことを発表しています。
家電量販店への進出も進み、ケーズデンキのオンラインストアではイヤーカフ型のBC1が税込6,980円で取り扱われています。
何世友氏はインタビューで、日本では目先の売上やシェアより、製品を選ぶときに最初の候補として思い浮かべてもらえるかを重視すると語っていました。
ブランド重視の日本市場は手強い、と本人も認めている点は正直だと感じます。
調べて見えた課題
ここまで読むと順風満帆に見えますが、気になる点もあります。
まず、非上場企業のため売上高や利益などの財務情報は公開されていません。
次に、運営法人の名称が資料によって異なり、日本の消費者からは「どこが責任を持っているのか」が分かりにくい。
そして、特許数や利用者数といった実績の多くは自社発表に頼っています。
製品そのものの評価とは別に、企業としての透明性には伸びしろが残っています。
★当ブログのオリジナル企業信頼度評価(5つ星評価)
運営体制の明確さ ★★★(3.0)
創業者兼CEOが表に立ち、取材にも応じている点は安心材料です。
ただ、資料によって運営法人の名称が異なり、全体の組織図がつかみにくい点で減点しました。
市場での評価実績 ★★★★☆(4.5)
大手投資機関からの資金調達や、ボーズとの協業は実力がなければ実現しません。
国内でもAmazonの販売実績と家電量販店での取り扱いがあり、評価は高めです。
商品開発の専門性 ★★★★(4.0)
GaN充電器で培った小型化と電源管理の技術は、イヤホンのバッテリー設計にも生きています。
オーディオ分野の歴史はまだ浅く、音作りの評価は今後の積み重ね次第です。
社会的・文化的な取り組み ★★★(3.0)
国際デザイン賞の受賞歴が多く、デザイン文化への貢献は認められます。
一方で、環境対策や社会貢献活動について具体的に確認できる情報は多くありませんでした。
財務情報の開示度 ★★☆(2.5)
非上場のため、売上や利益の数字は公開されていません。
資金調達の事実は報じられているものの、経営状態を外から判断する材料は限られます。
総合評価 ★★★☆(3.4)
製品力と市場での勢いは本物で、ブランドとしての土台はしっかりしています。
透明性が上がれば、さらに安心して選べる企業になるはずです。
商品紹介「BaseusイヤーカフイヤホンPM153」



商品詳細
- 色:ブラック
- ヘッドホン型式:開放型イヤカーフ
- モデル名:PM153
- 接続技術:ワイヤレスBluetooth6.0
- 装着構造:3カーブ設計の人間工学クリップ+柔軟なTPU製C型リング
- 重量:5.2g
- 固定方式:4点固定構造
- ドライバー:12mmの大型ダイナミックドライバー
- 振動板:バイオセルロース製ダイヤフラム
- 低音機能:AI搭載のベースブースト機能(シーンに応じて低音を自動最適化)
- 音漏れ対策:指向性オーディオ技術+自動ビーム調整機能
- マイク:4マイク搭載
- 通話ノイズ低減:AIENC(環境ノイズキャンセリング)ノイズリダクションアルゴリズム
- 低遅延:低遅延モード対応
- 防塵防水:IP57準拠
- 連続再生時間:本体満充電で最大7.5時間
- 合計再生時間:充電ケース併用で最大38時間
- 操作方式:物理ボタン(タッチ誤操作防止)
良い口コミ
「耳の穴に何も入れないので、夕方になっても耳の中がかゆくならないのが本当にありがたいです」
「ジョギング中に首を振っても外れませんでした。カナル型で何度も落として探した日々が嘘みたいです」
「開放型だから低音は期待していなかったのに、ベースの音がちゃんと聞こえて驚きました」
「物理ボタンなので、髪を耳にかけたときに勝手に曲が止まるストレスがなくなりました」
「在宅勤務で一日中つけっぱなしでも、子どもに呼ばれたらすぐ返事ができます」
気になる口コミ
「電車の走行音が大きい区間では、音量を上げないと聞き取りにくいです」
「静かなエレベーターの中では、音量次第で少し漏れているのではと気になってしまいます」
「本体だけで7.5時間なので、朝から夜まで連続で使うと途中でケースに戻す必要があります」
「耳の形によっては、慣れるまで装着位置を探すのに少し時間がかかりました」
「ボタン操作は確実ですが、押すときに耳が少し押される感覚があります」
「BaseusイヤーカフイヤホンPM153」のポジティブな特色
最大の魅力は、「ながら聴き」と「ちゃんと聴く」を1台で行き来できることです。
開放型のイヤホンは、周りの音が聞こえるかわりに音が軽くなりがちでした。
PM153は12mmの大型ドライバーに、バイオセルロース製の振動板を組み合わせています。
バイオセルロースは植物由来の繊維で、軽くて硬いため、音の立ち上がりがくっきりしやすい素材です。
さらにAIのベースブーストが、場面に合わせて低音を自動で補ってくれます。
小さな音量で聴く深夜の部屋でも、低音が痩せすぎないように調整してくれるイメージです。
装着の安定感も見逃せません。
3つのカーブを持つクリップと柔らかいC型リングが耳のふちを包み、4つの点で支えます。
重さは5.2gで、一円玉5枚分ほどです。
朝のゴミ出しから通勤、昼休みの散歩まで、つけたことを忘れて過ごせます。
通話の実用性も高めです。
4つのマイクとAIによる雑音処理で、風の強い日や自転車での移動中でも自分の声を拾ってくれます。
Bluetooth6.0と低遅延モードにより、動画のセリフと口の動きがズレにくいのも安心材料です。
IP57準拠の防塵防水は、汗をかく運動や急な雨でも気にせず使えるレベルです。
そして地味ながら効いてくるのが物理ボタンです。
帽子をかぶる、マフラーを巻く、髪を整える。
冬場に増えるこうした動作で誤って曲が止まらないのは、毎日使う人ほどありがたみを感じるはずです。
音楽を主役にしたい時間と、日常の音を主役にしたい時間。
その切り替えを、耳から外さずにできる点こそPM153の本質です。
「BaseusイヤーカフイヤホンPM153」のネガティブな特色
まず、開放型である以上、騒がしい場所には向きません。
地下鉄や交通量の多い交差点では周りの音に負けやすく、音量を上げると今度は音漏れが心配になります。
指向性オーディオで漏れを抑える工夫はありますが、ゼロにできるわけではありません。
図書館や静かなオフィスでは、音量を控えめにする配慮が必要です。
次に、本体のみの再生時間は最大7.5時間です。
ケース併用で38時間と聞くと十分に思えますが、朝から夜まで外さずに使い続ける人は、途中で充電の時間を挟むことになります。
また、提供されている商品情報には、対応コーデック(音声データの圧縮方式)や専用アプリによる音質調整、ワイヤレス充電、複数端末への同時接続についての記載がありません。
これらを重視する方は、購入前に販売ページで確認しておくと安心です。
物理ボタンは誤操作を防ぐ一方で、押す力が耳に直接かかります。
耳が敏感な方は、押し方に少し慣れが必要かもしれません。


他メーカーの商品との比較
価格の手頃さではPM153が際立つ
比較したのはHUAWEIFreeClip2、ShokzOpenDotsONE、BoseUltraOpenEarbuds、SoundcoreAeroClipの4機種です。
FreeClip2は市場想定価格が27,280円前後、OpenDotsONEは2万7880円、BoseUltraOpenEarbudsはメーカー希望小売価格が39,600円です。
SoundcoreAeroClipも参考価格は17,990円でした。
Baseusの同系統モデルBC1はAmazonで6,580円で販売された実績があり、価格帯がまるで違います。
PM153の実売価格は販売ページで確認してください。
軽さはFreeClip2が一歩リード
FreeClip2の本体は約5.1g、AeroClipは片耳約5.9g、OpenDotsONEは6.5gです。
PM153の5.2gは上位機と互角以上で、軽さで不利になる場面はほぼありません。
バッテリーは本体時間がやや控えめ
本体のみの再生時間は、OpenDotsONEが10時間(ケース込み40時間)、FreeClip2が約9時間(ケース併用で約38時間)、AeroClipが最大8時間(ケース込み最大32時間)です。
Boseはイマーシブ機能オフで7時間30分、ケース併用で19時間30分にとどまります。
PM153の7.5時間はBoseと同等で、合計38時間はFreeClip2と並ぶ水準です。
防塵防水はトップクラス
FreeClip2はイヤホン本体がIP57で、PM153と同等です。
AeroClipはIP55、OpenDotsONEはIP54、BoseはIPX4なので、汗や雨への強さではPM153が優位に立ちます。
ただし同系統のBC1は店頭表記がIP55です。
PM153の表記と異なるため、購入時は販売ページの表記を確認しておくと安心です。
音質と付加機能は上位機に分がある
OpenDotsONEはShokzとして初めてDolbyAudio(ドルビーオーディオ)を搭載し、ワイヤレス充電にも対応しています。
FreeClip2はAI処理用のNPU(AI専用の演算チップ)を新たに積み、専用アプリでイコライザーを調整できます。
立体的な音の広がりや細かな音作りを求めるなら、価格差なりの違いは確かにあります。
結論
音の作り込みやアプリ連携まで求めるなら上位機です。
一方で、軽さと防塵防水、合計再生時間は上位機に引けを取りません。
初めてのイヤーカフ型を手頃に試したい方には、PM153の費用対効果が光ります。
まとめ
冒頭で、この5.2gが一日の「音の主役」を入れ替えるとお伝えしました。
その答えは、耳をふさがないことにあります。
通勤中は音楽が主役で、家に帰ればインターホンや家族の声が主役に戻る。
同じイヤホンをつけたまま、その切り替えが自然にできるのです。
騒がしい電車内では上位機に及ばない場面もあります。
それでも、充電器で信頼を積み上げてきたBaseusが、手の届く価格でここまで仕上げた点には素直に驚かされました。
今日できる小さな一歩として、いつものイヤホンを外し、家の中で鳴っている音を3つ数えてみてください。
聞き逃したくない音が見つかったら、それがPM153を選ぶ理由になります。




