はじめに
近年、テレワークやランニングの普及に伴い、「耳を塞がないイヤホン」の需要が急速に高まりを見せています。周囲の音を聞き取れる安全性と、長時間着用しても耳が疲れにくい快適さは、現代のライフスタイルに不可欠な要素となりつつあります。そんな中、Amazonのランキングなどで頻繁に目にするのが「Earaku(イアラク)」というブランドです。手頃な価格でありながら、機能性を謳うこのブランドに興味を持ちつつも、「どこの国のメーカーなのか?」「安かろう悪かろうではないか?」と購入を躊躇している方も多いのではないでしょうか。本記事では、オーディオガジェットの分析を生業とする筆者が、Earakuの企業実態から主力モデル「F306」の実力までを徹底的に解剖します。忖度なしの検証結果を、ぜひ製品選びの参考にしてください。


Earaku(イアラク)ブランドの概要と国籍
企業詳細
「Earaku(イアラク)」というブランド名を聞いて、純粋な日本メーカーだと想像する方は少なくありません。リサーチの結果、このブランドは非常に興味深い「日中ハイブリッド」の形態をとっていることが判明しました。
実態として、Earakuは東京都新宿区に本社を置く「ジャストマッチ株式会社(JUST MATCH Corporation)」が展開するオーディオブランドです。同社は「暮らしの中での音の価値を見直したい」という理念のもと、日本国内でのマーケティング、販売、そして最も重要なカスタマーサポートを担っています。
一方で、今回紹介する製品のスペック情報にあるブランド名「mongeese」は、中国・湖北省や深センを拠点とする製造メーカーを指します。Mongeeseはキーボードやオーディオ機器のOEM(他社ブランド製品の製造)で実績があり、技術力には定評があります。つまり、Earakuは「中国の製造技術(Mongeese)」と「日本の品質管理・サポート(ジャストマッチ)」を掛け合わせたブランドであると言えます。単なる並行輸入品とは異なり、国内法人が窓口となっている点は、私たち消費者にとって大きな安心材料となります。
★当ブログのオリジナル企業総合評価(5つ星評価)
- 情報開示度:★★★★☆
日本国内に正規代理店(ジャストマッチ株式会社)が存在し、住所や連絡先が明確である点は高く評価できます。 - サポート体制:★★★★☆
日本語の説明書が付属し、日本国内でのサポート対応を謳っているため、トラブル時の対応は期待できます。いわゆる「売り逃げ」のような怪しい中華ブランドとは一線を画します。 - 製品品質:★★★☆☆
製造元であるMongeeseは一定の技術力を持っていますが、ハイエンドオーディオメーカーと比較すると、素材感や仕上げにおいて価格相応の部分が見受けられます。
総合評価:★★★★☆(4.0)
商品紹介:F306-C-BLKの商品スペック詳細



商品スペック
- 付属コンポーネント:ケーブル, 取扱説明書
- 商品の個数:1
- 電池:1 非標準バッテリ 電池(付属)
- 商品モデル番号:F306-C-BLK
- カラー:ブラック
- インターフェース:ブルートゥース
- 電池種別:リチウムイオン
- ブランド:mongeese
- 色:ブラック
- ヘッドホン型式:完全ワイヤレス
- 接続技術:ワイヤレス
良い口コミ
「耳を挟み込むタイプですが、素材が柔らかく、長時間つけていても全く痛くなりません。メガネと干渉しないのも助かります」
「家事をしながらラジオを聴くのに最適です。インターホンの音や子供の声がしっかり聞こえるので、安心して自分の世界に入れます」
「音質は予想以上にクリアでした。低音は控えめですが、ボーカルの声が聞き取りやすく、ポッドキャストや通話には十分すぎる性能です」
「ランニング中に使用していますが、カナル型のように汗で蒸れることがなく快適です。ズレ落ちる心配もありませんでした」
「設定が簡単で、ケースから出すだけで繋がるのが便利。機械音痴の私でもすぐに使えました」
気になる口コミ
「電車の中など騒がしい場所では、音量を上げないと聞こえません。しかし音量を上げすぎると音漏れが気になります」
「低音の迫力は全くありません。ロックやEDMをズシズシ聴きたい人には物足りないでしょう」
「タッチ操作の感度が良すぎて、位置を直そうと触れただけで曲が止まってしまうことがあります」
「私の耳たぶが厚いせいか、装着するのに少しコツがいります。慣れるまでは鏡を見ながら着けていました」
「専用アプリがないので、イコライザー調整やボタン配置の変更ができないのが残念です」
「F306-C-BLK」のポジティブな特色
この製品の最大の強みは、「圧倒的な装着感の軽さとコストパフォーマンスの融合」にあります。
多くのイヤーカフ型イヤホンが硬質なプラスチック素材を使用しているのに対し、F306は肌に触れる部分に配慮された設計となっており、まるで着けていることを忘れるかのような「空気のような装着感」を実現しています。これにより、長時間のウェブ会議や、BGMを流しっぱなしにする「ながら聴き」作業において、耳への負担を極限まで減らすことができます。
さらに、数千円というエントリークラスの価格帯でありながら、日本語音声ガイダンスや日本国内サポートが付帯している点は、初めてオープンイヤー型を試すユーザーにとって非常に高い安心感を提供します。単に「安い」だけでなく、「安心して使い倒せる」という点で、日常使いのパートナーとして100点満点のポテンシャルを秘めています。
「F306-C-BLK」のネガティブな特色
一方で、弱点は明確に「重低音の表現力」と「遮音性の皆無さ」です。
構造上、耳の穴を塞がないため、低音の振動が逃げやすく、迫力ある音楽体験を求めるには不向きです。また、ノイズキャンセリング機能がない(物理的にできない)ため、地下鉄や工事現場の近くなど、騒音レベルが高い環境では音楽が環境音にかき消されてしまいます。「音楽に没頭する」ための道具ではなく、あくまで「生活音とBGMを共存させる」ためのツールであると割り切る必要があります。


他メーカーの商品との比較
ここでは、イヤーカフ型イヤホンの購入を検討する際に、必ず比較対象となる3つのカテゴリー(ハイエンド、骨伝導、格安雑貨)の代表格と、Earaku F306を比較していきます。
対 ハイエンドブランド(ambie sound earcuffsなど)
イヤーカフ型イヤホンのパイオニアである「ambie(アンビー)」は、ファッション性とブランド力で圧倒的な人気を誇ります。ambieの最大の特徴は、アクセサリーのような洗練されたデザインと、ソニーの音響技術を活かしたバランスの良いサウンドです。
しかし、ambieユーザーからしばしば挙がる不満点が「硬さ」です。ambieは素材が比較的硬く、耳の形状によっては「1時間で耳が痛くなる」という声も少なくありません。また、価格は1万円台後半と、F306の数倍です。
対してF306は、ブランド力やデザインの高級感ではambieに及びませんが、「装着感の柔らかさ」と「圧倒的な安さ」で勝負しています。「まずはイヤーカフ型が自分の生活に合うか試してみたい」という方にとって、いきなりambieを購入するのはハードルが高いですが、F306はその入門機として最適です。音質へのこだわりよりも、実用性とコストを優先する場合、F306に軍配が上がります。
対 骨伝導イヤホン(Shokz OpenRunなど)
「耳を塞がない」という点で比較されるのが、Shokz(旧AfterShokz)に代表される骨伝導イヤホンです。Shokzは、頭蓋骨を振動させて音を伝えるため、鼓膜への負担が少なく、スポーツ時の安定感は抜群です。
しかし、骨伝導特有のデメリットとして「こめかみがくすぐったくなる振動」や「ネックバンドが髪型や襟に干渉する」という問題があります。特に、リラックスしてソファの背もたれに寄りかかりたい時、Shokzのような左右一体型のネックバンドは邪魔になります。
F306のような左右独立型のイヤーカフは、「寝転がりながら使える」「髪型やマスク、メガネに干渉しにくい」という点で、骨伝導タイプよりも日常の取り回しが優れています。また、音の伝わり方もF306は空気振動(極小スピーカー)なので、骨伝導のような独特の振動による不快感がありません。「スポーツ特化ならShokz、リラックスタイムやデスクワークならF306」という使い分けが明確です。
対 格安雑貨ブランド(3COINS、ダイソーなど)
近年、3COINSやダイソーなどの雑貨店でも、2,000円前後のイヤーカフ型イヤホンが販売されています。これらは価格面でF306の強力なライバルとなります。
しかし、これらの「超」格安製品とF306の間には、「通信の安定性」と「バッテリー性能」に大きな差があります。雑貨店系のイヤホンは、人混みでの接続切れが頻発したり、バッテリー持ちが公称値より極端に短かったりすることが珍しくありません。また、サポート窓口が不明瞭な場合もあります。
F306は、前述の通り「mongeese」というオーディオ製造の実績あるメーカーがベースにあり、Bluetoothの接続安定性やバッテリー管理において、雑貨レベルの製品よりもワンランク上の品質を確保しています。数百円〜千円程度の差であれば、毎日使うガジェットとしてのストレスフリーさを選んで、F306を選択する方が長期的な満足度は高いと言えます。
まとめ
本記事では、EarakuのF306について詳しく解説してきました。Earakuは、日本のサポート体制と中国の製造技術を組み合わせた、コストパフォーマンスに優れたブランドです。特にF306は、高価なハイエンド機や特殊な骨伝導イヤホンと比較しても、「日常への溶け込みやすさ」という点で独自の立ち位置を確立しています。「耳を塞がない快適さ」を未体験の方にとって、この製品は新しい音体験への扉を開く、最適な「最初の一台」となるはずです。




